演劇集団「キャラメルボックス」の活動休止には驚いた。5月26日に千秋楽だったキャラメルボックス公演「ナツヤスミ語辞典」を見たばかりで、その時には活動休止という話はまったく出ていなかったからだ。しかも、5月31日での活動休止を発表したのも、同日午後9時の公式サイトと、慌ただしかった。

そして、6月4日にはキャラメルの運営会社「ネビュラプロジェクト」が自己破産を申請したというニュースが流れた。ただ、この報道には活動休止ほどには驚かなかった。というのも、キャラメルの劇団活動の厳しさは、ほとんどの公演を見てきた記者の目にも明らかだった。

キャラメルは1985年の結成で、88年の新宿シアターモリエール公演からほとんど見ている。当時の若手劇団は、とがった作品を上演していたが、キャラメルは違った。「人が人を想う気持ち」をテーマに、「だれが見ても分かる、楽しい作品」を上演してきた。

90年の観客動員は1万人だったが、95年に当時は劇団員だった上川隆也がドラマ「大地の子」で人気者になると、飛躍的に動員を伸ばし、98年に年間4万人を突破した。最盛期は年間のステージ数は200回近く、観客動員数は12万人を超えた。ファンクラブと言える「サポーターズクラブ」会員も1万7000人だった。上演された作品は、成井豊と真柴あずきが脚本・演出を手掛けた。「四月になれば彼女は」「カレッジ・オブ・ザ・ウインド」「サンタクロースが歌ってくれた」「また逢おうと竜馬は言った」などオリジナル作品だけでなく、「クロノス・ジョウンターの伝説」「流星ワゴン」「時をかける少女」「ナミヤ雑貨店の奇蹟」など人気小説を原作にした舞台も数多かった。

自己破産を申請したネビュラプロジェクトは、結成の翌年86年の設立で、キャラメルの公演企画、ノベルティ製作、俳優マネジメントを手掛けてきた。06年1月期は売上高10億円を超えたが、11年の東日本大震災後は観客動員が伸び悩み、売り上げも減少した。18年1月期の売上高は約5億円と半減していた。

活動休止から、そのまま解散となるのかが心配されるが、破産申請が明らかになった日に成井豊氏はブログで「解散せず、休止します」と解散を否定。「再開の日を目指して、一人一人が精進してまいります」と、劇団を続ける思いをつづった。キャラメルは今後の公演として「エンジェルボール」の続編を予定していたが、活動休止で延期を発表した。「エンジェルボール」は、1度野球を諦めた男が、息子たちのために再びマウンドに立つ、奇跡の物語。活動休止を経て、再びキャラメルが舞台に戻ってくることを、多くの演劇ファンが待っている。ファンのためにも、舞台でも奇跡を起こして欲しい、と切に願っている。【林尚之】