春風亭昇太(59)が落語芸術協会の新会長に正式に決まりました。18年7月に桂歌丸会長が亡くなってから会長は空席でしたが、約260人の会員を擁する協会のトップに立つことになります。任期は2年。副会長には、入門が同時期で気心の知れた8代目春風亭柳橋(63)を指名しました。会長代行兼副会長だった三遊亭小遊三(72)は理事を退任し、桂米助とともに新しい役職「参事」となって、昇太をサポートします。

実は昇太は小遊三に「1期だけでも会長をやってほしい」と頼んだそうです。しかし、「嫌だ」「具合が悪い」「楽をさせて欲しい」と断られたそうです。小遊三が副会長になったのが05年。以降、15年間も執行部にいたことから、若い人にバトンタッチしたいという思いが強かったようです。確かに落語協会会長の柳亭市馬は57歳、上方落語協会会長も75歳の桂文枝から65歳の笑福亭仁智に若返っています。先日の会見で小遊三は「令和になって新しい息吹を感じる。当協会でもパワーのある人、ビジョンを考えられる人として、昇太さんに決まった」と昇太会長決定の理由を話していました。

当の昇太は「会長職がどんなものかは、これから分かってくる。今の落語界はいい時代で、私が入った時と比べると夢のような状態。二つ目も頑張っているし、ますますより多くの人に楽しんでもらいたい」。6代目春風亭柳橋、5代目古今亭今輔、4代目桂米丸、10代目桂文治、歌丸に続き、6代目会長となります。「歴代会長や他団体の会長を見ても、みんな重々しい感じで、僕みたいな薄っぺら人間がなっていいのかとも思いました。僕は5番手、6番手がいい。3位以内ではなく、6位入賞がいいんです。ここに来て、会長になったのも、そういう時期にいるんだなという気がします」。

協会としての活動については「落語の特徴はフットワークが軽いこと。座布団1枚で日本中を回れるので、いろいろな地域で生の落語に触れる機会ができたら」と前向きに話す一方で、落語家らしい「笑い」も忘れません。地方の落語会などで関係者から大きな花束をもらうことを引き合いに、「うれしいけれど、持って帰るのは大変なんです。たぶん5000円はすると思う。そこで私が訴えたいのは、5000円の花束よりも3000円の祝儀ということ。落語家の多くは賛同してくれるはずで、日本中に広めたい」と笑いを誘っていました。

副会長の柳橋が「初めての女房役をやらせていただきます」と、独身の昇太をいじると、昇太は「こんな女房はいらない」。そこで、懸案の嫁取りについて質問が出ると、「人生は勢いなので、この波に乗っていきたい。僕の1番の問題は伴侶がいないこと。解決をいち早く図っていきたい」と即答しましたが、小遊三が「あてはあるのか?」と聞くと、黙り込んでしまいました。【林尚之】