どこにでも姿を現す正体不明の存在“それ”の恐怖を描くホラーの続編。前作が17年に公開されると、米国では不気味なピエロが街に相次いで出没し、社会現象になるほどだった。ホラー映画史上最高の22億円を超える興行収入の記録を打ち立てた話題作が、恐怖も謎もスケールも倍増した。

原作は米国を代表するホラー小説の大家、スティーブン・キングの長編小説。前作ではルーザーズ(負け犬)・クラブと呼ばれていた落ちこぼれ7人組が邪悪なピエロの姿をした“それ”に団結して立ち向かい、井戸の奥底に沈めたはずだったが、27年後に再び現れ、連続失踪事件が発生。大人になったルーザーズ・クラブの面々が故郷へと舞い戻る。

“それ”が牙の生えた口を開けるときの恍惚(こうこつ)とした表情はゾクッとした。子供たちの恐怖体験の回想シーンもあり、前作を見ていない人でも楽しめる。単なるホラー映画ではなく、人間ドラマがしっかりと描かれている。人々に恐怖を与えてきた“それ”が初めて自分で恐怖を感じるシーンには現代社会への強いメッセージを感じた。ジャンルを飛び越えた長編大作である。【松浦隆司】

(このコラムの更新は毎週日曜日です)