だれもが少なからず生きづらさを感じる時代に、寅さんが帰ってくる。第1作公開から50年。山田洋次監督の人気シリーズ「男はつらいよ」の22年ぶりの最新作は、登場人物たちの「今」を描く映像と、4Kデジタルで修復され、よみがえる名場面が組み合わされている。

寅さんのおいで小説家になった満男(吉岡秀隆)が、かつての恋人イズミ(後藤久美子)と再会し、物語が展開する。満男の母で寅さんの妹さくら(倍賞千恵子)や夫の博(前田吟)らも出演する。妻に先立たれ、人生をもがく満男が記憶の中の寅さんと会話する。

第39作「寅次郎物語」(87年)、満男が「人間は何のために生きてんのかな」と問いかけると、寅さんは「何ていうかなあ。ああ、生まれてきてよかったなって思うことがなんべんかあるじゃない。そのために人間、生きてんじゃねえのか」。随所でよみがえる名ゼリフに心が揺さぶられた。寅さんファンのサザンオールスターズの桑田佳祐が出演して主題歌を歌う。中学生以下の鑑賞料は100円(一部劇場除く)。孫、子ども、家族と。不器用だけど、義理人情に厚い、みんなの寅さんが帰ってきた。【松浦隆司】

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