菅野美穂(43)が、日本テレビ系「ウチの娘は、彼氏が出来ない!!」(13日スタート、水曜午後10時)で、40代で初めて連続ドラマに主演する。浜辺美波(20)と母娘を演じる撮影と並行し、私生活では2児の育児に奮闘する日々。セリフを落とし込む取り組み方から「以前とは違う向き合い方」という女優業と、母としての今を語った。

★正直きついなと…

菅野の1日は、5歳の長男と2歳の長女が起きる早朝に始まる。昨年12月に撮影が始まって以降、1日が終わるのは、撮影後にせりふを覚える深夜に及ぶ。

「子どもが朝6時か6時半には起きるので。(撮影終了は)セットは大体、夜11時…遅くなったら0時くらい。(家に)帰ってからセリフを覚えて2~3時くらいになっちゃって、また6時に起きなきゃいけなくて。正直、これが続くとこの年齢だときついなと。でも、毎日じゃないんで」

所属事務所・研音の公式YouTubeチャンネルの企画で、山崎育三郎(34)とドライブした際「毎日、白目をむいてます」「誰も怒っていない時間は1日で5分くらい」などと日々の育児を赤裸々に語った。

「この年で結婚して、子どもを持てたことは本当に幸いなんですけど…やっぱり現実としては、もしかしたら、良かったなぁと思うこと以上に大変なこと、責任があったり叱らなきゃいけないことがある。最近は撮影で離れている時間があるので、ちょっとだけマイルドになっているんですけど(笑い)、それこそコロナ禍で自粛の時は、ずっと怒っているような感じでした」

★“娘”浜辺に感心!

「ウチの娘は、彼氏が出来ない!!」では、娘を演じる浜辺の芝居と人柄に、感心しているという。

「破天荒なお母さんと奥手な娘という組み合わせで、アイスを取り合ったり、親子らしい親子というより友だち同士に近い役どころ。浜辺さんとの共演は初めてですけど、監督の演出の変更への反応も速いし、すごくお芝居がしっかりされている。自分が20歳の時、こんなにしっかりしていたかなと思うくらい。掛け合い、2人の息を合わせての演技が求められるシーンも多いので楽しい。取材の時の受け応えも、人柄も、しっかりしていてすごいなぁと。10歳くらいから(女優を)やられているんですよね。さすがだなと思いました」

昨年9月に撮影を終えた10年ぶりの主演映画「明日の食卓」(瀬々敬久監督、今春公開)でも2人の息子を育てるフリーライター役を演じた。母親役が増えてきた中、思うことがある。

「浜辺さんのお母さまは47歳だそうで…私、43歳。なるほど、と。年ごろの子どもがいる方が、実際の年齢としてはリアリティーがある年代に入ってきて。(娘を)デートに送り出すシーンを撮って、自分には15年くらい訪れないかなと思っています。もしかしたら東京だと(子どもがデートに出るようになる年齢は)もっと早いのかも知れないですけど。楽しみだなぁという気持ちと、実際そうなったら違うことを思うんだろうか、なんて想像したり。役に向き合わなければ考えなかったことを想像するようになって楽しいです」

★向き合い方に変化

長女が1歳半まで休むつもりだった仕事を再開した。長男は仕事が分かり始めており成長を感じている。

「上の子は5歳なので、朝に『お仕事、行っていいよ』とか言ってくれるようになって。『今日は、まだ余裕があるんだ』と言うと『もう行っていいよ』と。早く行って、みたいな(笑い)」

子育てで子どもが泣いたりする中、セリフはどうやって覚えるのだろうか。

「子どもが寝たらセリフを覚えようと思うと、なかなか寝ない。喫茶店に行ったりして、ちょっと集中してやったりしていたんですけど、2人目になってからは、それもちょっと難しくなってきて。15~20分くらいにガッと集中して、というのが精いっぱいになってきて、すきま時間が、せりふの時間みたいな感じで。クランクインしてからは、移動の時に覚えたり…セリフを覚えることが出来る時間が増えた気がします」

女優業への向き合い方も変わった。それが自分の成長だと感じ始めている。

「独身だった時って、どうやってセリフを覚えていたんだっけ? と思うと、お風呂の時に覚えたりとかしていて。(家族に)任せている部分もあるんですけど、子どもの連絡で現場から電話したりとか、以前とは違う役への向き合い方になった。でも、それが今の向き合い方になったんだと。時間は少なくなったんだけど、今の方が、集中しようという力がついた気がします」

★働く背中を子供に

子どもができ、仕事に新たな目標も生まれた。

「子どもに、働くということを自分の背中で見せられるのは、直接教えることとは違う。男の子は特に一生働くということを考えると、親として見せてあげられる何かがあるんじゃないかなと思っています」

20、30代に続き、40代でも連ドラで主演を張る。タイトルに「娘」がつく作品は96年の連ドラ初主演作「イグアナの娘」(テレビ朝日系)以来。演じる役どころは娘から母に変わった。

「『イグアナの娘』の時、母親役の川島なお美さんは35歳。当時の川島さんの年齢を超して、現場に若い子も増えてきて。年長者として見本になるような何かを示せているのかなと。自分は先輩方にいろいろ教えていただいたのに…育児もあったりして、渡せていない気がするんですよ」

コロナ禍の中、エンターテインメントのあり方も変わってきたと感じるが、追求するものは変わらない。

「自分たちも自粛期間中、テレビの力に励まされた。役割は変わらないのかも知れないですけど、研音がYouTubeチャンネルを始める時代。見てくださる方の選択肢が増えたじゃないですか? 視聴率は取れない時代になったかな。でも、一生懸命やるのは変わらない。ドラマを見てくださった方の心の中に、とどまっていられるような演じ方が出来たらと思います」

思い描く今後のビジョンを聞いた。

「正直、育児があるので日々、その日のこと…あまり長いスパンで考えなくなりました。必死に毎日、過ごして積み重ねたことを数年後、振り返った時に、どう思うのかを楽しみに、今日のセリフと、家のこと、子どもたちのことを、乗り越えようとしている気がします」

「ウチの娘は、彼氏が出来ない!!」は将来、子どもに見せたいのだろうか。

「見てもらいたい気持ちもあるんですけど、ちょっと恥ずかしい、照れくさい気持ちもあって。だから、一緒に見るというよりは、自分が知らないところで見てもらえたらいいなと。感想とかも、あまり聞きたくないなぁと思います」

今の、菅野美穂を見て欲しい…語らずとも、思いは伝わってきた。【村上幸将】

▼「ウチの娘は、彼氏が出来ない!!」で共演する事務所の後輩・福原遥(22)

憧れの菅野さんと共演させていただくことが夢でもあったので、ご一緒させていただけて本当にうれしかったです!! 公私ともに尊敬するところばかりで、お会いする度に、こんなすてきな女性になりたいといつも思います。スタッフ、共演者の皆さんへの心配りが、優しさにあふれていて、私も撮影でとても緊張していたのですが、温かい雰囲気の現場を作ってくださり、少しお話もさせていただけてとても楽しく安心して撮影させていただけました。

◆菅野美穂(かんの・みほ)

1977年(昭52)8月22日、埼玉県生まれ。92年に芸能界入りし、93年のテレビ朝日系「ツインズ教師」で女優デビュー。96年の同系「イグアナの娘」で連ドラ初主演。98年エランドール賞新人賞、02年に映画「Dolls」でゴールデン・アロー賞映画賞。今月スタートの日本テレビ系「ウチの娘は、彼氏が出来ない!!」で、16年のTBS系「砂の塔 知りすぎた隣人」以来4年ぶりに連ドラ主演。15年8月に長男、18年12月に長女を出産。158センチ、血液型AB。

◆「ウチの娘は、彼氏が出来ない!!」

恋愛小説家でシングルマザーの水無瀬碧(菅野)は、オタクの娘空(浜辺)に恋人ができず悩んでいた。とある理由から2人は「私たち、恋をしよう」と決意。娘は人生初、母は久々の恋を経験する。

(2021年1月10日本紙掲載)