確かな歌唱とダンス、演技力を誇る雪組トップ望海風斗主演の雪組公演「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」新人公演で、最終7年目の諏訪さきが、初主演に抜てきされた。最後のチャンスだった。

「聞いた瞬間は体中の力が抜けて…。最後の最後に…感謝しかなかった。正直、私はこの新人公演の配役で、自分の目指す方向性が変わると思っていました」

これまで年齢の高い男性や悪役と、多彩な役を演じ、芝居心は高い評価を得ていた。今作は、ギャング映画をもとに、小池修一郎氏が脚本、演出。米・ニューヨークの移民少年が成り上がっていく様と、友情と絆、待ち受ける悲劇を描く。

「今までの(役)すべてがあったから、最後に、男役として幸せなお役をいただけた。経験は無駄ではなかった」。本役のトップ望海は、諏訪の報告を受け「小さくガッツポーズしてくださった」そうだ。

「今までも、新人公演の後、ダメ出しをうかがいに行っていて。そのとき『主演をしたい』と気持ちをずっと伝えていたので。そのためにこの役に何が必要か、何が足りないかを一緒に考えてくださった」

母は大地真央と同期の男役諏訪アイ。幼少時から、近くで宝塚志望の受験生も多く見ていた。5歳からヒップホップ、小学時代はクラシック、ジャズダンスを習い、受験を意識したのは「小6ぐらい」だった。

「最近は、現代的な新しい作品、役も多い。だからこそ、伝統的な、男くさい、宝塚らしい男役に」。王道の男役を極める望海こそ目指すべき道。稽古場でも、望海の姿を追い続ける。

「セリフを言う前の呼吸、歌っているときの下半身の使い方…。歌稽古でも、体を使って歌われる。重心が低い感じがして、そこから深い声が出ているのかな、と。帽子のかぶり方、かぶったときの動きも学ばせていただいています」

今春、新人公演を卒業する。「今年はもっと男役の幅を広げ、芝居も、表現力も高めていきたい」。兵庫・宝塚大劇場で21日、東京宝塚劇場は3月5日。

◆ミュージカル「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」(脚本・演出=小池修一郎) 1984年公開のギャング映画(セルジオ・レオーネ監督)をもとに、世界初のミュージカル化。20世紀の米社会を背景に、ニューヨークの貧民街で暮らす移民の少年たちが、ギャングとして成り上がっていく過程と、少年を取り巻く友情と絆、恋を中心に描く。

☆諏訪さき(すわ・さき)10月3日、京都生まれ。13年入団。雪組配属。16年2月「るろうに剣心」新人公演で、当時2番手の望海が本役の加納惣三郎役に抜てき。新人公演では多彩な役に挑み、前作「壬生義士伝」新人公演は、主人公に切腹を命じる旧友を熱演。身長172センチ。愛称「しゅわっち」「くっすー」。