コロナ禍で放送延期となっていた春ドラマのうち、5作品が相次いでスタートした。うち3作品がバディもので、木村拓哉の「BG~身辺警護人~」(テレビ朝日)をはじめ、それぞれ見応えがあり、連ドラが戻ってきた日常に感謝するばかりだ。今回は、5月3日付「勝手にドラマ評」42弾の追加分。単なるドラマおたくの立場から、勝手な好みであれこれ言い、★をつけてみた。

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ドラマ「探偵・由利麟太郎」(C)フジテレビ
ドラマ「探偵・由利麟太郎」(C)フジテレビ

◆「探偵・由利麟太郎」(フジテレビ、火曜9時)吉川晃司/志尊淳

★★☆☆☆

横溝正史の由利麟太郎シリーズを初連ドラ化。冷静沈着な白髪の「由利先生」を吉川晃司が演じる。血族のオルメタ、閉ざされた山村での殺りく、見立て殺人、倒錯人間の気味の悪い動機など、横溝ワールドは昭和のじめっとした恐怖とセットなので、「現代風に新解釈」の作風がしっくりこない。1話の人体実験は令和の時代に無理があり、2話は美女がひたすら幻覚を見て悲鳴をあげるお化け屋敷テイストだった。吉川晃司の隙のない造形が全体のサスペンス感を支え、助手の志尊淳とのコンビネーションも悪くないだけに、レトロなのかポップなのか、バランスの悪いチューニングに物語がかみ合わないのが残念。

水曜ドラマ「ハケンの品格」(C)NTV
水曜ドラマ「ハケンの品格」(C)NTV

◆「ハケンの品格」(日本テレビ、水曜10時)

★★☆☆☆

派遣社員、正社員ともに07年とは労働環境が激変した中、13年ぶりに復活したスーパーハケン大前春子がどんな新スキルを発揮するのか期待したが、正社員がオープンに派遣を見下す古典がすごすぎて、春子に集中できない。大泉洋VS派遣のバトルに愛と哲学があった前作の見どころが消え、「派遣の分際で」と威張る部長、若いハケンに契約更新をチラつかせて体を触る人事部など、ヒール側がしょぼいのは致命的。パワハラもセクハラも見えないように悪質化し、コロナ禍で派遣切りも起きている2020年の空気感を、お仕事コメディーとしてバッサリ斬ってほしかった。撮影の事情はあるにせよ、大泉洋を動かさないと物語が締まらない。

木曜ドラマ「BG~身辺警護人~」(C)テレビ朝日
木曜ドラマ「BG~身辺警護人~」(C)テレビ朝日

◆「BG~身辺警護人~」(テレビ朝日、木曜9時)木村拓哉/斎藤工

★★★★★

日ノ出警備保障のチーム戦から2年。フリーランスとなった島崎(木村拓哉)の個人戦を描く。離ればなれの元日ノ出メンバーのうち、最初に合流するのが無愛想な高梨(斎藤工)という展開が最高。個性の違う2人のタッグに色気があり、「誤差なし」で通じ合える男の世界がかっこいい。広いロケでの痛快アクション、おもしろい会話、展開に次ぐ展開でテンポが良く、政財界を巻き込んだ1話のスケール感、ピアニストを守った2話の寄り添い感など、各話の味わいも多彩。「個人VS組織」のテーマに元日ノ出メンバーがうまく機能し、IT大学生道枝駿佑が今後どう関わるかも楽しみ。「教場」「グランメゾン東京」と最近のキムタクはハズレがない。

金曜ドラマ「MIU404」(C)TBS
金曜ドラマ「MIU404」(C)TBS

◆「MIU404」(TBS、金曜10時)綾野剛/星野源

★★★★☆

通報現場に駆け付け初動捜査を行う機動捜査隊モノ。正義バカと理性派という定番のバディ設定が各局とかぶり、アラフォーのウザキャラ設定にまだ慣れない。あおり運転を題材に、覆面パトカーの業務内容を描いた1話。広い東京でその都度犯人車両と出くわすご都合主義な捜査だったが、横転&廃車のカーアクションは最高だった。世代的に、綾野剛の能力に島村ジョー(加速装置)とフランソワーズ(聴力)がチラつき、サイレンからの警察無線に柳沢慎吾がチラついてしまうが、米津玄師の主題歌が今回もかっこよく、SNSも番組ファンで熱気がある。この4機捜に入りたいと思えるような、「アンナチュラル」チームの人間ドラマを期待して様子見。

◆「未満警察 ミッドナイトランナー」(日本テレビ、土曜10時)中島健人/平野紫耀

★★★☆☆

事件に遭遇した警察学校の半人前コンビが、出たとこ勝負の実践捜査。原作の韓国映画が傑作だけに、2時間の作品を連ドラ化する試み(話数分の事件を作ったり、女子候補生を入れたり)がどう出るか。頭脳派の中島健人と行動派の平野紫耀。2人とも役の本質はつかんでおり、「ソーセージ食べないからだよ」みたいな何げないせりふにも血が通う平野紫耀に見入る。授業で得た知識が役に立つフォーマット。1話の事件がスカスカで残念だったが、2話は原作の監禁事件なので注目したい。警察学校モノは、ヘッポコだった若者が最終回でどんな顔つきになっているかが肝。タイトル通り、必死に走り回る彼らの成長を、最終回まで見届けたい。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)