10年に亡くなった井上ひさしさんが書いた舞台「ムサシ」と「シャンハイムーン」が上演中だ。

 09年に初演された「ムサシ」は、宮本武蔵と佐々木小次郎が、巌流島の決闘後に再会するという架空の後日談を描いた、井上さん最後の作品でもある。16年に亡くなった蜷川幸雄さんが演出した。10年にはロンドン、ニューヨークで上演され、辛口で知られる劇評家にも絶賛された。

 その後、シンガポール、ソウルで公演があり、これまでにのべ5カ国10都市で171公演、17万人を動員する人気公演となっている。

 今回は、蜷川さんの三回忌追悼公演と銘打たれ、初演から武蔵を演じる藤原竜也、14年から小次郎役で参加の溝端淳平が出演している。故人が「演出」に名前を連ねていることに違和感を覚える人も多いかもしれないが、昨年、蜷川さんの名前を冠した「NINAGAWAマクベス」が上演されたように、蜷川演出はしっかりと受け継がれている。

 その中心にいるのは、30年以上も蜷川さんの演出助手を務めた井上尊晶さんだ。右腕として稽古の進行役を務め、蜷川演出の全てを知り尽くしている。そして、照明の原田保、舞台美術の中越司など「チーム蜷川」ともいえるスタッフが集結し、「ムサシ」でも舞台の背景にある竹やぶの揺れ具合など細部にわたって、蜷川演出を踏襲し、忠実に再現している。

 蜷川さんが亡くなって2年が経過したが、この「チーム蜷川」がある限り、蜷川演出の舞台は続いていくだろう。