5年前は「壁ドン」をデスクに説明するのに苦労したなあ…。

14年の春、壁ドンを広めたとされる少女漫画「L・DK」を原作にした映画のイベントを取材した。当時、壁ドンなるものが話題になっていることを知らず、主催者に「今日、舞台上で『壁ドン』をやります」と、いきなり言われて戸惑ったことを思い出した。イベントから少したった後、当欄のようなコラムに、以下のようなことを書いている。

「壁…ドン…? 吉本新喜劇で、調子に乗った島田珠代さんが、勢いつけて壁にぶつけられるアレですか? 正しい壁ドンとは『壁を背にした女性を男性が手でふさぐようにして告白する』ような恋愛におけるシチュエーションだった。この説明で合っているかどうかも微妙なのだが、取りあえずはそういうことらしい。『舞台上で壁ドンをやります』と担当者が鼻息を荒くしていたそのイベント、男性出演者が観客の女性に『壁ドン』を実演してみせ、場内に絶叫が起こった。確かに鼻息を荒くするだけのことはあった。この盛り上がりをデスクに伝えようと、『壁ドンというものですごく盛り上がりました。壁ドン、というのはですね、壁を背にした女性を…』と説明してみた。おそらくこの時点では、壁ドンなるものをデスクは認識していなかったと思う。デスクからは苦笑いしか返ってこなかった-」

そして映画やCMの影響もあって、「壁ドン」は広がり、この年の流行語大賞のトップ10にもなった。

さて、先日、この少女漫画を原作にした映画第2弾、「L・DK ひとつ屋根の下、『スキ』がふたつ。」(川村泰祐監督、3月21日公開)のイベントを取材した。上白石萌音、杉野遥亮(ようすけ)、横浜流星が壁ドントークを繰り広げた。

横浜によると、壁ドンも5年前から進化したそうで、ハイブリッド壁ドンと名付けていた。「壁ドンからのあごクイ、壁ドンからの引き寄せ」など、コンビネーションになっているようだ。キャラクターによっても壁ドンタイプが異なるそう。上白石は、横浜が演じたキャラクターの壁ドンは「スピード感があってパワーがあるので、アスリート系」と評していた。

…というようなトークを聞いて、壁ドンという言葉がごく普通に使われ、聞いている側も疑問がないという状態になっていることを実感した。壁ドンって何? と思ったのが5年前だけど、もっと昔のような気がして、言葉の広まりや根付きの早さを感じた。