高倉健さんも信頼寄せた降旗康男さんの美学/悼む

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降旗康男監督は、木村大作カメラマン(79)と組むことが多かった。声が大きく前に出る木村さんと、おっとりと構える降旗監督は対照的で、新人俳優の中には、木村さんを監督と勘違いする人が多かった。

だが、演技の機微を見極める目は確かで「駅 STATION」や「鉄道員」で高倉健さん(享年83)後半生の孤高のイメージを作りあげた功労者の1人だった。健さんも生前、「一見頼りなさそうに見えるけど、できあがった作品は必ず降旗色に仕上がる」と話した。

助監督時代から健さんの信頼は厚かった。「昭和残侠伝」(65年)のエンディングは人工の雪の中に健さんのシルエットを浮かび上がらせる斬新なもので、「男の美学」を印象付けた。実はこれを撮ったのが当時30歳の助監督、降旗さんだった。健さんは黒沢明監督の「乱」(81年)の出演を断ってまで、降旗監督の「居酒屋兆治」に出演した。

健さんに限らず、どんなに役を作り込んで現場に臨む俳優でも、その目を意識して演技をするうちにいつの間にか降旗色に染められてしまったという。笑顔の奥の穏やかな目には、そんな力と魅力があった。【相原斎】