東京オリンピックを記録する公式映画の監督を務める、河瀬直美監督(51)の「朝が来る」(10月23日公開)が、第68回サン・セバスティアン映画祭(スペイン、9月18日~26日開催)コンペティション部門に出品されることが3日、同映画祭事務局から発表された。同部門への出品は、国際批評家連盟賞を受賞した10年の「玄牝」、18年の「Vision」に続き3作目。受賞結果は、最終日の9月26日(現地時間)に発表される。

河瀬監督は「サンセバスチャンには、10年前、6歳の息子と一緒に行った時の記憶が鮮明です。小さな手を引いて歩いた海辺の街には映画を愛する人々がたくさんいて、とても温かな気持ちになった記憶があります」と出品を喜んだ。

スペインは新型コロナウイルスの感染が、欧州の中でも拡大した国の1つで、2日時点で感染者は25万人、死者は2万8000人を超えている。世界2位の観光立国であるスペインの中でも、名所のコンチャ湾のビーチや美食で知られるサン・セバスティアンも打撃をこうむっているという。河瀬監督は「コロナ禍において歴史あるサンセバスチャン国際映画祭が、開催の意志を持って世界を光の方向に照らしてゆく祭典に、正式出品作として『朝が来る』を選んでくださり感無量です!」と映画祭が開催の方向であることに感謝した。その上で「10年ぶりのあの海辺の街へ、映画と共に訪れる日が来ることを、ピンチョスを食べて、シードルを飲んで、語らい、分かち合い、できる日が来ることを、願っています!」と期待した。

「朝が来る」は、世界3大映画祭の1つ、カンヌ映画祭が、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で5月12日から同23日の通常開催を見送ったことを受けて発表した、第73回映画祭の公式ラインアップ56作品の1つに選ばれ「CANNES 2020(カンヌレーベル)」の称号を得た。同映画祭事務局は「世界の、他の多くの映画祭がカンヌレーベルを歓迎している」と強調。その上で、サン・セバスティアン映画祭が、賞レースにカンヌレーベルに選ばれた作品も加わることが出来るよう、例外的にルールを変えたことも明らかにしていた。

「朝が来る」は、米アカデミー賞の前哨戦としても知られる、トロント映画祭(カナダ、9月10日~19日開催)への出品も決まっている。