11月に急逝した東映の岡田裕介会長(享年71)が発案した、吉永小百合(75)主演映画「いのちの停車場」(成島出監督)のティザーポスターが13日、お披露目された。同会長が鉛筆画でのポスター制作を熱望し、写真にしか見えない超写実的な鉛筆画で知られる古谷振一氏が作画を担当。同会長は亡くなる直前までチェックを重ねた。公開日は来年5月21日に決まった。

ポスターの上下左右には「まほろば診療所」の医師役の吉永、職員役の松坂桃李(32)訪問看護師役の広瀬すず(22)院長役の西田敏行(73)の姿が並ぶ。一見、白黒写真にしか見えないが、手書きで描かれた鉛筆画だ。関係者によると、岡田会長が8月に「最初のポスターは普通のことをするな。インパクトをつけろ。鉛筆画でやろう」と口にしたのが始まりだった。

岡田会長はある鉛筆画を見て着想を得ており、命を受けたスタッフが探索。著名人の顔を写真のように精緻に描き、メディアにも取り上げられる古谷氏の絵を探し出した。同氏は16年に広瀬を描きツイッターで発表しており、同会長は「これだ」と起用を決定。富山在住で会社員の傍ら創作を続ける同氏は、鉛筆で細かく手書きするため、1人描くのに2週間程度かかる。9月4日のクランクイン後、最初に出来上がった吉永の絵を見て岡田会長は「よく書けている。こういう感じだ」と喜んだという。

当初は4人の鉛筆画とタイトルロゴでデザインしたが、岡田会長が「寂しい。温かさが欲しい。鉛筆画と写真の差を見せるようなものを」とダメ出しし、場面写真を交える方向に修正。同会長は亡くなる2日前の11月16日にもデザインに目を通したが、修正された最終版を見ることはかなわなかったという。

映画を愛し、映画女優吉永をリスペクトし続けた岡田会長の魂がこもった“形見”が作品を後押しする。

◆「いのちの停車場」 東京の救命救急センターで働いていた白石咲和子(吉永)は、ある事件をきっかけに故郷金沢のまほろば診療所で在宅医師として再出発する。咲和子を追い、働き始めた元大学病院事務員野呂聖二(松坂)、訪問看護師星野麻世(広瀬)、仙川徹院長(西田)らと患者に寄り添う中、最愛の父達郎(田中泯)が倒れる。