乃木坂46が毎年恒例の「真夏の全国ツアー2023」を締めくくった。8月28日に東京・神宮球場で行われた千秋楽公演では、特にキャプテン梅澤美波(24)のスピーチが話題となった。「私たちが、乃木坂46です」。涙ながらに宣言した。

2月に前キャプテン秋元真夏(30)が卒業、5月に絶対的エース齋藤飛鳥(25)の卒業公演を終え、3~5期生だけになって初のツアーだった。卒業したメンバーや活動休止中のメンバーを除くと、ツアーを通して参加したのは歴代最小の33人。さらにファイナルの神宮公演はグループ史上最多の4日間。決して低くないハードルだった。

それでもチケットは完売し、「見切れ席」とも呼ばれるステージバック席も含めて観客で埋まった。1日3・8万人、4日間で計15・2万人を動員。「神宮4日間、乗り越えることができました!」。3期生の1人としてもツアーを引っ張ってきた梅澤の瞳に浮かんだ涙には、安堵(あんど)も込められていたのだろう。

「とても大きな試練でした。怖さも不安もあったけど、今、先輩達の後をしっかり受け継げたと思います」と続け、一呼吸置いて「私たちが、乃木坂46です!」と言い切り、大きな拍手を浴びた。

「私たちが乃木坂46です」のワードはたちまちファンの間で拡散され、X(旧ツイッター)でもトレンド入りした。ライブ関係者は「ツアー中のMCでも1度もなかったフレーズでした。もちろん最終日もああいう内容で話す予定はなかったと思います。千秋楽の流れの中で、本人が何かを感じて出た言葉ではないでしょうか」と推測した。

3期生は常に闘ってきた。16年9月に加入。披露目イベント「お見立て会」は同年12月に東京・日本武道館で行われた。翌17年2月からは「3期生のプリンシパル」、さらに春には3期生ライブも続き単独公演の機会も多かった。

同年8月リリースのシングル「逃げ水」で、与田祐希(23)と大園桃子さん(現在は卒業、引退)がダブルセンターに抜てきされた。同年11月には乃木坂46として初の東京ドーム公演にも出演。さらに翌18年4月発売のシングル「シンクロニシティ」で山下美月(24)久保史緒里(22)が選抜入りし、グループに欠かせない存在となっていく。一見、順調に恵まれてきた世代だ。

だが、3期生が闘っていたのはまさにそこだった。メンバーたちは口々に「本当に恵まれていました」と話す。一方で、山下は以前「ずっと『乃木坂46』として認められたくて走り続けてきたんだと思います」とも表現していた。乃木坂46をゼロから築き上げてきた1期生に、研究生からスタートし長い下積みを経験したメンバーも多い2期生。加入時期のグループの状況が違えば環境も違うのは当然なのだが、やはり各期それぞれが比べられがちでもあった。確かに、ごく一部からは、先輩たちより恵まれたような3期生の待遇に否定的な声があったのも事実だろう。

「NHK紅白歌合戦」にも初出演(15年)を果たし、乃木坂46が人気を確立した16年9月に加入したからこそ、3期生たちは本当の意味での「乃木坂46」としての自信が持てなかったのかもしれない。東京ドームも「先輩たちの力でたどり着いたステージ。私たちは何もしていない」と異口同音に述べていた。卒業生のポジションに3期生が入ってパフォーマンスする際、どこか不安げな表情を見せていたこともあった。

だが、今に至る乃木坂46の勢いは間違いなく3期生の功績が大きい。本人たちは「認められたい」と思い続けていたかもしれないが、遅くとも18年の「真夏の全国ツアー」あたりからは間違いなく主力級の活躍をしていたし、1、2期生が卒業していくにつれて違和感なく存在感を増していった。

18年と20年に4期生、昨年には5期生が加入。3期生が先輩としてつなぎの役目も果たしつつ、現在は各期がバランス良く活躍している。山下がNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」、久保がNHK大河「どうする家康」にレギュラー出演するなどソロ仕事の面でも力強くけん引。キャプテンとして初めてツアーに臨んだ梅澤もより安定感を増してきた。

今回のツアーを観戦し、「私たちが、乃木坂46です」のスピーチを認めないファンはいないだろう。結成13年目、正真正銘自分たちの手で「乃木坂46」の歴史を紡いでいく。【横山慧】