稲見萌寧(22)が2位で、日本ゴルフ界初のメダルを獲得した。10アンダーの3位から出て、9バーディー、3ボギーの65と猛追。優勝した世界ランキング1位のネリー・コルダ(米国)には1打及ばなかったが、通算16アンダー、268でリディア・コ(ニュージーランド)と並び、銀メダルをかけたプレーオフを制した。

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稲見が日本ゴルフ界に新たな歴史を刻んだ。男女通じて初めてのメダル獲得。表彰式には普段と違い、髪を下ろした姿で登壇。銀メダルを誇らしげに掲げ「人生の中で一番の名誉で、うれしいことだと思います」と満面に笑みを浮かべた。

最後まで手に汗握る展開だった。朝から背中痛を感じ、応急処置をして臨んだ最終日。「呼吸がしづらかった」と序盤はバーディーとボギーが交互に出る不安定な滑り出しだった。それでも座右の銘は「忍耐」。亡き祖父の昭さんからもらった言葉通り、後半の12番から4連続バーディーで追い上げた。17番パー4では、雷雲の接近により第2打の後にプレーが中断。約45分間待った直後、首位のN・コルダが見つめる中で4メートルをしっかり沈め、9個目のバーディー。偶然ほぼ同じラインについていた同組のグリーンが先に打ったパッティングが参考となる運も味方につけ、71ホール目にして一番上に並んだ。

勝負のかかった最終18番。第2打をバンカーに入れてボギーとし、手にかかっていた金メダルは惜しくも逃した。「がっかりしても次につながらない」。気持ちをすぐに切り替え、前回大会銀で元世界ランキング1位のコとのプレーオフへ。「追い込まれると強いタイプ」。その言葉通り、プロでは3戦全勝の一発勝負を1ホールで決着させた。

最後までオリンピック(五輪)を楽しんで勝った。大会前、意気込みを聞くと「全力で楽しむ」と言い切った。5年前のリオデジャネイロ五輪から復活したゴルフ。各国世界ランキング2番手までが出られる舞台で、今年のシーズン開幕前は5番手。「どうしても出たい。序盤で複数回優勝できればチャンスはある」と話し、ここまで今年最多5勝と有言実行。開幕直前には両手のネイルも5色の五輪カラーと赤白の日本カラーに変えた。「好きな選手でもあるリディアさんとのプレーオフは本当に楽しかった」と笑った。

9歳でクラブを握った時から空振りしなかったという天性のセンスに加え、「世界一になるには世界一練習しないと話にならない」と1日10時間以上も練習してきた努力で今がある。「日本開催で日本人がメダルを取れて、そこが一番うれしかった。これからゴルフを始める人たちにも夢を与えられたんじゃないかな」。4月にマスターズ優勝の松山英樹など快挙の続く日本ゴルフ界に、また1つ明るい光をもたらした。【松尾幸之介、峯岸佑樹】

◆稲見萌寧(いなみ・もね)1999年(平11)7月29日、東京都豊島区生まれ。小学4年でゴルフを始め、16年にナショナルチーム入り。18年にプロテスト合格し、翌年にツアー初優勝した。正確なアイアンショットで今年5勝を含むツアー7勝。166センチ、58キロ。