北野監督の丸刈りから2カ月…讃岐7戦無敗の秘密

 2カ月前、丸刈りだったカマタマーレ讃岐・北野誠監督(50)の頭には、白髪と黒髪が混じったグレーの髪が伸びていた。

 クラブ記録の8戦無敗が懸かった、16日の首位湘南ベルマーレ戦に0-1で敗れた試合後、北野監督は会見で「7試合負けなし自体が奇跡。何とも思わない」と淡々と口にした。

 監督自ら7戦無敗を「奇跡」と評すように、この2カ月でどん底からV字回復した。6月17日にアウェーで大分トリニータに1-2で敗れてから、7月15日にレノファ山口に1-3で敗れるまで5連敗を喫し、北野監督は50歳の誕生日の同17日に頭を丸めた。迎えた同22日の東京ヴェルディ戦に3-3で引き分け、連敗こそ止めたものの、同29日には大分にホームで0-1で敗戦。同30日時点の順位は降格圏の21位で、勝ち点は最下位ザスパクサツ群馬と並ぶ14も2勝は22チーム中最低。降格圏外の20位山口との勝ち点差は5だった。

 それが8月5日の水戸ホーリーホックとのホーム戦に2-0で勝つと、そこから5連勝。その後、2戦連続で引き分けたが、7戦無敗の快進撃。湘南戦でも前半32分にCKから先制を許したが、前半の入りや後半はボールを保持。終盤はパスを回して主導権を握り、リーグ戦で頭1つ抜き出た首位湘南をゴール前にくぎ付けにするなど、一歩も引かない自信を持った戦いぶりを見せた。17日時点の暫定順位は19位。勝ち点は31で、降格圏21位に沈んだ山口との差は逆に6上回った。北野監督に、復調の理由を聞いた。

 北野監督 湘南さんよりも、うちの選手の方が表情が、すごい豊かだったと思うんですよね。本当にブレずに言い続けて、それを選手たちがブレずに実行し結果に出たんで、また次いいサッカーをしたい、勝ちたいという気持ちが、どんどん、どんどん芽生えてきているというのが、正直なところ。今日も0-1で折り返したハーフタイムの、選手の口から出ている言葉はすごくポジティブ。今の状態が夏前だったら、もっと面白いことが出来たのかなと思う。あと9試合…時間がないので、この調子を続けて勝ち点を重ねたい。

 ブレない讃岐のサッカーとは何か…。取材ノートを開くと、16戦ぶりの複数得点を挙げながら3-4で4連敗を喫した、7月8日のジェフユナイテッド千葉戦後の、北野監督の発言に核心の一端があった。

 北野監督 ジェフが前に来ている分、ボールを奪ったら背中(千葉の選手の背後)は空く。後半は何度か(相手陣内の)深い位置は取れていた。狙いは、そこ。ジェフ最大のストロングポイントのハイプレスを、最大のウイークポイントにするためには(自陣に)引き込まなければいけない。そこも狙っていた。

 千葉戦では、ハイプレスをかける相手の攻撃に対し、しっかりとブロックを作って粘り強い守りで対抗。前半13分に先制を許したが同34分に追いつき、攻める千葉の背後をカウンターで突き後半20、32分に2度、逆転に成功した。

 東京V戦では、攻撃時にパスをつないでくる相手からボールを奪うと、一気にカウンターを仕掛ける攻めを繰り返し、前半だけで2得点。同44分、GK清水健太の弾いたボールが、東京VのFWアラン・ピニェイロに当たって、そのままゴールインするなど不運な失点もあり引き分けたが、北野監督は「うちのやりたいところで点を取れていたけれども、残念な失点が3点あった」と語った。

 湘南戦でも、縦に速い湘南の攻めを局面での体を張った守備で食い止め、ボールを奪うとサイドに展開。サイドを起点に中央、サイドと注意深くボールを回しながら深くまで攻め込み、湘南の3バックを揺さぶる中で脇や選手間のズレを突こうと試みていた。湘南には4月2日にホームでも3-0で完勝し、今季初黒星をなすり付けている。湘南の曹貴裁監督(48)は讃岐を次のように評した。

 曹監督 相手のストロングポイントをしっかり抑え、自分たちの良さを出すのにたけたチーム。前、後半、違う顔でプレーできる、バリエーションがある、戦いにくい相手。チームとしてコンセプトを共有してるという印象が今日も強い。

 相手の長所と短所を徹底研究した上で、長所を殺し、短所を突くために走る、つなぐ、体を張るなど、自分たちの出来る最大限のプレーを90分、続ける…それがブレないことこそ、讃岐のサッカーだろう。

 何よりブレないのは、10年に当時四国リーグだった讃岐の監督に就任後、現役のJリーグ監督では最長の8年、チームを率いてきた北野監督の信念だ。東京V戦後、監督は言った。

 北野監督 まだ降格が決まっているわけじゃない。J2の中でも全然、戦えるし「うちが弱いな」と言う人は多分、1人もいないと思う。これを続けていけば、強いチームになる。

 その言葉から2戦後、讃岐は7戦無敗を続けた。FW馬場賢治(32)は古巣・湘南戦後に「練習でやってきた、準備したことが出来る部分があった。最後の精度とアイデアが足りず点が取れなかった」と、手応えと反省を口にした。

 北野監督は東京V戦で、50歳の誕生日に周囲にも告げずに丸刈りにした理由について「俺が逃げたらダメ。選手を鼓舞し続けるだけ。丸刈りにしても選手が気合入れなきゃ仕方ない。でも、まず俺がやらなきゃいけない」と語った。それから2カ月…延びた髪を再び丸刈りにする必要は、もうないだろう。讃岐は今、どんな相手とも真っ向勝負できる自信と、相手に対応し、長所の裏を突く狡猾さを併せ持つ戦う集団になっている。【村上幸将】

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  • 東京V対讃岐 頭を丸めて臨んだ試合で引き分け、険しい表情でピッチを後にする讃岐の北野誠監督(撮影・村上幸将)