スペイン1部でプレーするフットサル日本代表の森岡薫(41)が、さらなる警戒が必要だと訴えた。新型コロナウイルスの感染拡大で死者が急増するスペインから3月31日に一時帰国。都内のホテルで自主的に14日間の隔離生活を送っているフットサル界のキングは、日本に残っている“甘さ”に危機感を募らせていた。

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今年1月に加入し、世界最高峰の舞台で戦い始めた矢先の“コロナ禍”だった。最長6月末までのリーグ戦は中断となり、自宅などでのオンライン練習で再開を待ったが、見通しは立たない。スペイン政府が厳しい外出制限を強化する中、安全面などを考慮して家族を残していた日本への一時帰国を決断した。

森岡 むこうは今、開いているのは生活必需品を買うスーパーや薬局ぐらい。ずっとスペインにいようと思っていたけど、感染者や死者数が増え、いろんな国が封鎖を始めて危機感を感じました。最悪ですよ。こういう状況でプレーできなくなる悔しさはあります。

スペインは3月中旬までの感染者数は日本と同水準だったが、その後、爆発的に増加し、死者は1万人を超えた。そんな深刻な状況に直面している国から戻ると、日本の空港で感染対策の甘さを感じたという。

森岡 日本に来て、がっかりしました。(入国審査などで)並ぶ時は欧州では距離をとって並んでいたけど、そうした呼びかけもなかった。今、スペインや英国など日本が外国人の入国を拒否している国に14日以内に滞在した人は別部屋で検査を受けないといけないですが、自分が乗ったロンドン経由の飛行機には100人ぐらい乗っていて、検査に来たのは15人もいない。もっといるでしょと思いましたけどね。スペインでは非常事態宣言が出たあとの1週間はみんなマスクもせず、普通に生活していて一気に広まった。今ではスーパーでも2メートルずつ距離をあけて並んで、5人ずつ入って商品を選んで、会計に入ったら次の5人が入るというぐらい徹底している。都内ではまだ街に人がいる。パンデミックは自分が周りのことを考えないと収まらないことだと思います。

所属するスペイン1部のオ・パルーロは、政府に一時的に解雇する選手の給与負担などを求めているという。認められれば政府が給料の70%、クラブが残りの30%を負担するという説明があったという。2月下旬に開幕予定だったワールドカップ(W杯)予選を兼ねたAFCフットサル選手権は延期となった。

森岡 部屋の中でやれることは限られているし、コンディションを戻すにも時間はかかる。今の目標はW杯なので、自分にできることは全てしたいなと思っているけど…。調整は難しいですが、まずは健康が一番。前向きにとらえて、乗り越えるしかないですね。

自主的に隔離生活を送っている都内のホテルで、感染拡大が終息し、再びプレーができる日を待っている。【聞き手=松尾幸之介】

◆森岡薫(もりおか・かおる)1979年(昭54)4月7日、ペルー生まれの日系3世。Fリーグ名古屋時代には15-16年までの9連覇に貢献。MVPと得点王に各4度輝き「キングオブFリーグ」とも呼ばれる。その後、町田などを経て、20年1月にオ・パルーロに移籍。12年8月に日本国籍を取得し、同年に代表デビュー。175センチ、77キロ。