日本陸連は26日、堺市内で理事会を開き、8月4日開幕の世界選手権ロンドン大会の代表選手19人とリレー候補選手4人を発表した。男子100メートルと200メートル代表のサニブラウン・ハキーム(18=東京陸協)は会見に出席し、将来の目標として「9秒58」の世界記録更新を公言し、今大会を最後に引退を表明している世界最速男ウサイン・ボルト(ジャマイカ)との対戦を心待ちにした。

 夜明けに立ち上る朝日がイメージされた日本代表の新ユニホームをまとったサニブラウンは2種目で代表になった世界選手権を「自分試し」と位置付けた。「試合以外の時は、ぶっちゃけ暇なんです」と遠征にはゲームを持ち歩く、緊張とは無縁の18歳。約1カ月後に迫った世界の強者たちとの戦いを「考えると楽しみで寝られなくなる。だからあまり考えないようにしている」と白い歯をみせた。

 25日までの日本選手権では100メートルと200メートルともに自己ベストを更新した。オランダに拠点を置き、五輪で男子3段跳び2連覇中のクリスチャン・テイラー(米国)ら世界のトップアスリートと切磋琢磨(せっさたくま)し、成長を感じているから自信がみなぎる。東京・城西高時代から秘めていた胸の内を約100人の報道陣の前で公言した。

 サニブラウン 大きな目標として、世界記録を更新できたらなと思ってやってます。

 聞かれた質問は「9秒台への思い」。ただ、それをはるかに超える目標を掲げた。「9秒台は意識していない。条件がそろえばおのずと出てくる」。世界で124人もいる9秒台ではなく、「9秒58」を超える世界最速の称号に目を向ける。そのボルトとは「まだ1回も走ったことがない。100メートルで一緒に走れれば」と対戦を心待ちにした。決勝まで進めば、ほぼ間違いなく対決は現実となる。

 日本選手権の疲労はまだ残っているという。「寝たりない感じがありますね」と笑う。まずはオランダへ戻り、疲労回復と本番へ向けた調整に努める。五輪、世界選手権を通じ、決勝に進出した日本人は、100メートルでは32年ロサンゼルス五輪の吉岡隆徳、200メートルでは03年世界選手権パリ大会の末続慎吾しかいない。「両種目の決勝で戦いたい」。サニブラウンが日本短距離界に光を照らす。【上田悠太】