5月14日、スポーツ庁から「スポーツ関係の新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドライン」が発表された。

それを受けて、さまざまなスポーツ団体がガイドラインを作成し、公表している。少しずつアスリートも、スポーツを楽しむ人も、活動を再開できるようになってきているのだろう。特定警戒都道府県などは、知事の判断になると記載もある。

国際的な視点も設けたいと思い、なじみのあるオーストラリアのAIS(Australian Institute of Sport)のガイドラインを紹介したい。AISはコミュニティーにおける活動、個人スポーツのガイドラインと合わせて、プロスポーツ、ハイパフォーマンススポーツのガイドラインを発表している。

活動の内容をA、B、Cのレベルに分けている。Aが最も厳しい条件で、Cになるとほとんど普通にトレーニングできるというものだ。

たとえば私の出身競技である競泳は、レベルAでは1レーンに1人で泳ぐか、オープンウオーターでの練習が可能とされていた。柔道のレベルAでは、ランニング/エアロビクス/敏捷性トレーニング/レジスタンストレーニング(ウエートトレーニングを含む)/テクニカルトレーニングなどを個人で行うことに限ると記載されていた。

オーストラリアらしいなと思ったのは、ラグビーをラグビーユニオン、ラグビーリーグ、ラグビーセブンスと3つのカテゴリーに分けて記載していたこと。ラグビーが好きな私には興味深かったし、うれしかった。

これからスポーツの再開を模索していく上で重要なことは、日本におけるスポーツの価値はどれくらいなのだろうか、ということだ。

ドイツでは3月に「アーティストは必要不可欠であるだけでなく、生命維持に必要」としたことを受けて、「即時支援」500億ユーロ(約5兆7500億円)、「個人の生活の保護」100億ユーロ(約1兆1500億円)、「法的措置の緩和」の3つの文化分野のための救済策を出した。また5月9日のメルケル首相の演説では「連邦政府は、芸術支援を優先順位リストの1番上に置いている」と文化に重きを置く姿勢が見られた。

またドイツでは、基本的に各州が文化に対する権限を有しているとも。この文化、芸術に対する価値の置き方は、世界中に伝わった。

スポーツもきっと人生における重要な分野であると思う。ドイツのサッカー最高峰リーグであるブンデスリーガは、欧州4大リーグの中で最も早い5月16日に再開した。

今後は、各国がそれぞれの国内ガイドラインに沿って、どのように活動を再開していくか注視していきたい。

日本ではガイドラインは発表されたが、今のところオンラインでトレーニング動画を公開する方が増えているように思う。工夫をこらしたやり方を見て「これでもできるんだ!」と思っている方も多いだろう。私もなんとか家でできるトレーニングを毎日行っている。SNSではプッシュアップチャレンジなどエクササイズのコンテンツなどもある。

ちなみに、2017年に発表されたスポーツ基本計画では、国民(成人)のスポーツ実施率を週1回以上が65%(障害者は40%程度)となることを目指すとされている。昨年11月~12月の調査によると、まだ53.6%(障害者は25.3%)だ。

この機会に、体を動かすことが幸せで、気持ちを自分らしく保てるものだと気づきが持てている方が増えていたらうれしいなと思っている。

スポーツは人生に欠かせないものとして、価値がもっともっと上がっていくことが大切だと私は思う。アスリートへの共感やリスペクトは、その試合の一瞬だけではないことが望ましい。トレーニングを毎日続けて、日々のアップデートこそが勝利を生むのだから。

(伊藤華英=北京、ロンドン五輪競泳代表)