SNSを見ていると、いつも明るくさせてくれる選手がいる。重量挙げの松本潮霞(なみか、28=ALSOK)。リオデジャネイロに続く2大会連続のオリンピック(五輪)出場を狙う女子64級のエース。新型コロナウイルスの猛威の中、他選手同様に自宅で過ごす日々を送っているというが、そのユニークさは失っていない。

例えば、自粛期間におうちトレーニングとして投稿したのは、物干しざおを両肩に背負った姿。競技で使う「家にあった所属先のユニホームを全部かけました」というハンガーでつるしなはら、スクワットを指南した。他には、湯を張っていない風呂釜の両端に手をかけての上下運動なども。「家トレなどはみんな載せているので。まねできそうだけど、それやらないよ、というのをテーマにしました」。説明も短く。「ちょっとくすっとしてもらえればいいかな」と意図する。

特に伝えたかったのは、競技に打ち込む学生だという。日本代表選手だけが特別ではない。同じように家でできることをやっている。それを見せたかった。「いまは世の中では誰も特別な活動なんかしてはいけないところを、(私は)体現しているんです」。そこにコミカルさをまぶす。コロナ前も、今年の干支(えと)でネズミ、誕生日にはケーキなどの着ぐるみシリーズで、見た人を笑顔にさせてきた。コロナ禍でもスタンスは変わらない。

自宅では重いバーベルを練習場のように使うことはできない。100キロを超える重りは、床の耐久性も防音も求められ、2LDKの自宅では制約もある。ただ、「ホームジム」は作った。「一番、私のくつろぎの場だったところをジムにしちゃったんで、全然くつろぐ所がなくなりました」と苦笑しながら、60キロの重りから試行錯誤してきた。「このままどうなるんだろう」と不安もあるというが、根っからの明るさがある。

最後に1つお願いをした。コミカルな「うちトレ」の新作ないですか? 

「え、なかなか難しいですね。降りてくるかな…。でも、これがいま私にできることですので。と、真面目っぽく言ってみました」と照れて承知してくれた。

数日後、写真が送られてきた。そこには白米を茶わんに大盛り、通称「日本昔話盛り」をしながら、椅子なしで食事をする姿が映っていた。題して「空気イスご飯」。確かに、できそうだけど、やらないかも…。でも思わず楽しくなった。【阿部健吾】(ニッカンスポーツ・コム/スポーツコラム「We Love Sports」)

新作「空気イスご飯」を行う松本
新作「空気イスご飯」を行う松本
干支のネズミ姿の松本(本人提供)
干支のネズミ姿の松本(本人提供)
干支のネズミ姿の松本(本人提供)
干支のネズミ姿の松本(本人提供)
ケーキ姿の松本(本人提供)
ケーキ姿の松本(本人提供)
トナカイに扮(ふん)する松本(本人提供)
トナカイに扮(ふん)する松本(本人提供)