「ビーチバレーボールのペア組みは、恋人選びと似ているんです」。東京五輪出場を目指す清水啓輔(33=フリー)は独特な表現を交えて語る。清水がこう表現するのは、より良いパートナーを見つけようと各選手たちが動向を探り合う様子を言い表している。

2人1組で行うビーチバレーは、2人が出場した大会で得たポイントの合計が国内ランキングに反映される。上位チームになればNTC(ナショナルトレーニングセンター)の関連施設を優先的に使えるだけではなく、東京オリンピック(五輪)出場権を争う戦いにも加われる。戦略的な観点から、1、2シーズンという短い期間でペアを解消するケースも珍しくない。

清水、村上斉(31=ADI・G)組は、日本バレーボール協会が選出する強化指定選手だ。清水は最新の国内ランキング12位(1135ポイント)、一方の村上は9位(1272ポイント)。合計が2407ポイントで、チームランキングは4位。上位6チームが出場できる東京五輪日本代表決定戦(1枠)に出場し、代表入りを目指している。

2人がペアを組むのは、約4年ぶりだ。16年リオデジャネイロ・オリンピック(五輪)アジア大陸予選日本代表決定戦に挑んで決勝で敗れたが、リザーブチームとして日本代表に選ばれた。その後はそれぞれ違う選手とペアを組んでいたが、共通の目的である来夏の東京大会出場へ再結成した。

清水は村上とペアを組むまでの約1年間、意中の相手が見つからなかった。それでも、国内ランキング上位を維持するため大会に出場してポイントを獲得しなければならず、各大会ごとに周囲に掛け合って急造チームで臨んでいた。「ビーチバレーボールは実力でのし上がる世界。より上位の選手と組みたいと思っていたので、ペア選びは妥協できませんでした」と振り返る。

上位ペアが解消されるとのうわさが出ると、すぐさまラブコールを送った。電話やメールで「ペアを組みたい」と単刀直入に意思を伝えることもあれば、1度食事に誘って相手の真意を確かめることもある。上位陣の動きに呼応して他のペアも立て続けに組み替えるケースがあり、清水は「まるで恋人を『シャッフル』しているみたいです」と独自の見解を述べる。

実際にペア結成しても、苦労は尽きない。ほとんどのチームが、移動や食事のほか、遠征先の宿泊部屋さえも共にすることになる。活動資金が乏しいため遠征費を節約したいからだ。普段仲良くても、長期になると煩わしさを感じてストレスがたまることもある。ビジネスライクな付き合い方をしていたり、けんかが絶えず冷め切っていたりと、各チームで特徴が分かれるようだ。

より良いパートナーを見つける上で、ご法度なのは「浮気」。複数の選手へ同時にラブコールして返事待ちをすることや、ペア解消を伝えないでパートナー探しをするのは相手との信頼を大きく損なう。目的を達成するために短期的に見たら良いことでも、長期的には禍根を残しかねない。他の選手と良い関係を築きつつ競技を続ける上で、度が過ぎた駆け引きはマナー違反になる。

清水は「昨日の敵はきょうの味方になるのが、ビーチバレーボール。他のプレーヤーを邪険にしていたら、できませんよ」。

4年ぶりにペアを組む村上から選ばれたのは実力だけではなく、相手を思いやる誠実さも評価されたからだろう。落ち着きを払った33歳の姿には、味方を包み込む優しさを感じさせる。どんな経緯でチームが結成されたのか-。これもまた、ビーチバレーの別の楽しみ方かもしれない。【平山連】(日刊スポーツ・コム/スポーツコラム「We Love Sports」)

得点が決まって互いをたたえ合う清水啓大(左)と村上斉(撮影・平山連)
得点が決まって互いをたたえ合う清水啓大(左)と村上斉(撮影・平山連)