世界19位の錦織圭(28=日清食品)が力尽きた。4大大会13度の優勝を誇る同6位のジョコビッチ(セルビア)に3-6、4-6、2-6のストレート負け。大坂なおみ(20=日清食品)に続く、4大大会で日本テニス史上初となる男女同時の決勝進出はならなかった。だが右手首のケガからの完全復活を印象づけ、10日に発表予定の最新世界ランキングでは12位が確定。次戦は、17日からのモーゼルオープン(フランス)に出場予定だ。

また、ジョコビッチだった。錦織の前に、必ず立ちふさがり、常に行く手を遮った。打てども返せども、錦織は精気を吸い取られるように、魂を抜かれた。「よみがえってくる自分のテニスが来る気配がしなかった。エネルギーがなかった」。完敗だった。

今年だけで4度目の対戦だ。フェデラー、ナダル、マリーとともにビッグ4といわれる中で、対戦数17回は群を抜いている。「(ジョコビッチが)自分とやる時は、画面で見ている時より強いなと感じる」。苦手な壁が、いつも立ちはだかった。

4時間8分を戦った準々決勝の疲労が残っていたことは明らかだ。第1セット、最初の自分のサーブで、球がネットの下の方に当たった。体が制御できていなかった。2-5では、グランドスマッシュを打つ時に、足がもつれた。「足が動かなかった」。

必死でもがき続けた。何とかこじ開けようと、ネット、強打、ドロップショットなどを仕掛けた。それでも、ことごとくはね返された。試合後の会見で、「え~、え~、すいません、頭が回らなくなってきた」。疲労と敗戦の痛みで、頭がぼーっとしていた。

しかし、1月下旬には、世界最高峰の4大大会どころか、ツアー下部大会への出場で、ケガから復帰せざるを得なかった。そこで1回戦も勝てなかった。「ここまで来た自分を誇りには思う。この2週間、やりきれた」。

昨年の11月、リハビリの真っただ中で、錦織は当然のように夢を語っていた。「トップ10に戻れないわけがない。それだけはしっかりと言える」。今大会の結果で、世界ランキングは12位に戻る。年末の上位8人だけが資格のある最終戦ATPツアー・ファイナルの出場も、まだまだ圏内だ。そのため、フランスの大会への参戦も決めた。完全復活まで、残りわずかだ。【吉松忠弘】