◆170センチの挑戦

26日に、今年最後のテニスの4大大会、全米オープン(ニューヨーク)が幕を開ける。日本NO・2で、世界59位の西岡良仁(23=ミキハウス)にとって、4大大会本戦15度目の挑戦となる。「結果が出ているの、自信はありますね。気持ち的にもレディーです」。

18日に閉幕したウエスタン&サザンオープン(シンシナティ)では、予選を勝ち上がり、本戦2回戦では、日本の大エース、錦織圭との初対決を制した。4大大会に次ぐ規模のマスターズ大会で、自身初の8強入り。準々決勝を体調不良で棄権したが、すでに完全に回復した。

身長170センチは、今大会本戦出場128人の中で、シュウォーツマン(アルゼンチン)と並んで、最も背が低い。だからこそ、多種多様な球種や展開を駆使して勝ち上がるおもしろさがある。「最近、テニスは本当にゲームだと感じている。試合中にいろんな布石を打って、最終的にどう勝つか」。

そのためには、「わざとパワーのない球を打って、相手に打たせる」ことで、打ち気を誘ってミスをさせたりもする。サーブの速度も時速170キロ前後。それを「返されるのは前提で、なるべく相手の芯を外すのを意識している」。球種、コース、フォームを変えながら、決して読ませない。速度がない分、読まれて決められたら終わりだが、そのもろ刃の剣がはまった時こそ、西岡の真骨頂だ。

苦手だったフォアハンドに攻撃力が備わったのも成長の原因だ。左利きからのフォアで、縦回転のかかった山なりの球を鋭角に送り、相手をコートから外に出す。次に返ってきた球を、あいたコートに、フォアでたたき込む。この展開が加わり、得意のバックハンドがより生きるようになった。

まさに頭脳戦だ。最近、大好きだったゲームから足を洗い、「賢くなろうと勉強している」と笑う。「いろんな企業の本を読むのが好き。企業がどうなっていくとか」。今は、動画のクリエーターの本にはまっている。企業を成長をさせる戦略は、西岡のテニスの展開に近いものがあるのかもしれない。

昨年9月に、中国・深センで、ツアー初優勝を遂げた。マスターズ大会でもベスト8に入ったが、4大大会はまだ2回戦の壁が破れない。「チャンスはある」。1回戦の相手は大会推薦枠で出場の同151位のギロン(米国)だ。「気を抜かないで向かっていきたい」。日本が誇る世界最小の男が、輝く時がやってくる。

◆全米オープンテニスは、WOWOWで8月26日~9月9日、連日生中継。WOWOWメンバーズオンデマンドでも配信。