元職員の横領を隠蔽(いんぺい)してきたことが問題化している日本バドミントン協会に、現役選手が声を上げ出した。

東京五輪代表の奥原希望(27=太陽ホールディングス)は13日深夜、日刊スポーツのコラムを引用してツイート。日本協会の銭谷専務理事が以前に発した「選手たちを守らないといけないという思いだった」というコメントを取り上げたうえで、「今でもその思いはあるのかな。これ以上関係者を失望させないでほしいです。誠心誠意、みんなが納得する対応をお願いしたいです」と訴えた。

国内最高峰S/Jリーグ加入チーム、トリッキーパンダースの渡辺哲義代表は、現役選手やコーチの多くは“人事報復”を懸念し、協会批判と捉えられかねない発言をためらう傾向が強いと指摘する。そうした中で、トップ選手が発した勇気ある発言。奥原の投稿は半日で200以上リツイートされ、1000を超える「いいね」がついている。

奥原は協会について言及した過去のツイートにて、現場と運営側では立場が異なることへの理解を示し、「協会に批判ということではなく、選手と協会が同じ目標に向かっていく必要がある」との見解を提示。「協会や選手、外部の人と意見を出し合えるような場が欲しい。協会ともっとコミュニケーションとれるようになりたい。バド界の力になりたい」と投稿していた。

信念を持って発言した選手はほかにもいる。現在は実業団チームには所属せずに活動する三枝力起(みえだりき、27=アートホーム)は、「企業チームに所属している選手はもちろん、今は僕を含め個人にスポンサーをしていただいて活動している選手も増えてきています」とまず説明。そのうえで、「企業やスポンサーにとって『バドミントン』というスポーツが悪いイメージになってしまい競技を続けられなくなる。それが本当に選手のためなのか…」と疑問を呈した。

三枝は国際大会での華々しい実績は持たず、世間的な知名度は必ずしも高くはない。ともすればかき消されかねない中でも発した言葉には、強い意志と覚悟がにじむ。

日本協会元職員による約680万円の私的流用などを調査した第三者委員会の報告書は約1カ月前に日本協会に提出された。協会幹部による隠蔽(いんぺい)主導が認められたとされるが、日本協会は調査結果を依然として公表していない。続く臨時理事会では関与した幹部への処分が決まったものの、その詳細についても発表されていない状況が続く。関係者によれば、処分内容は最も重くて厳重注意にとどまる見込みだ。

17日にはスポーツ庁の室伏広治長官や日本オリンピック委員会(JOC)の山下泰裕会長など5団体のトップによる円卓会議が開かれる。この際に日本バドミントン協会幹部の対応が問題視され、国からの強化費が2割削減される見通しとされる。

ガバナンスをないがしろにしてきた協会幹部の責任は重い。現役選手たちが勇気を持って発信した言葉に耳を傾け、しっかり受け止める必要がある。【奥岡幹浩】