吉本芸人が動画で自己紹介! 天才ピアニストは天才? いえいえ、努力で1等賞に挑みます

総勢6000人にも及ぶ所属タレント、芸人を抱える吉本興業。日刊スポーツ・プレミアムでは、毎週木曜日を「吉本の日」とし、企画インタビューを掲載。売り出し中の芸人には約3分の自己PR動画も同時アップ。ネタを入れ「こんだけおもろいで!」とアピールしてもらいます。今回登場するのは天才ピアニスト。ますみの上沼恵美子モノマネでブレイクした女性コンビの今を追いました。

おもろいで!吉本芸人

三宅敏、村上久美子

「第52回NHK上方漫才コンテスト」で見事優勝した天才ピアニスト。女性コンビによる優勝は非常階段(シルク・ミヤコ)以来、36年ぶりの快挙だった。しかし、ますみ(35)と竹内知咲(30)の目標は「女性初」「女性ナンバーワン」ではなく、漫才、コントの面白さで男女通じてのトップを目指している。上沼恵美子のモノマネで浮上のきっかけをつかんで4年。休む時間を惜しんでネタ作りに取り組み、YouTubeでの発信にも力を注ぐ。コンビ名は「天才」だが、“努力型芸人”でもある。

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今年のNHK上方漫才子テストは、まれに見る激戦だった。1回戦で漫才を披露した天才ピアニストと「○○顔漫才」で爆笑を誘った「もも」が、7人いる審査員のうち3票ずつ取り、決戦投票にもつれこむ混戦。最後の1票を奪取した天才ピアニストが決勝進出を決めた。

ますみ 最初の投票で3対3。まさかの同票で「こんなことってあるんや」と内心ハラハラでした。

竹内 ネタそのものに絶対的な自信を抱いていたわけではないですが、私は「最後の1票」でイケると信じてました。会場のお客さんの手ごたえがあったし、ネタが終わって、審査員の方々の反応も良かったし。だから、決戦投票の時も意外と冷静でいることができました。

わずかの差で、ももを退けてのファイナルでは、先輩にあたる滝音が相手。天才ピアニストは、夫の不倫相手の女と自宅で対面する妻という設定のコントで勝負に出た。このときも場内の反応は上々。限られた時間内で大きな笑いを呼びこんだ。審査員による投票は「7対0」の大差で優勝決定。ステージには「パーン!」と大きな音が鳴り響き、金色の紙吹雪が舞った。

ますみ 事前に「優勝決定時には大きな音が鳴りますよ」と注意を受けていたのですが、そんなこときれいに忘れていたので、あまりの音に本当にびっくりしました。予想外の満票をいただいて、頭の中が真っ白でしたから。でも、紙吹雪を1枚、記念に拾って、今でもこっそりポケットに入れています。

竹内 これまで賞レースではなかなか勝てなかった。NHKの会場は女性客もたくさんおられたし「女性ファンが多いところでは、女性芸人は勝てない」とも聞いてました。でも、ネタが良ければ私たちでも勝てるんだという自信がつきました。

元看護師のますみ、元高校教師の竹内がコンビを結成して7年目。最初に注目されたのは、ますみの上沼恵美子モノマネだった。

きっかけは18年、「大御所女優とAD(アシスタントディレクター)」という設定のコントだった。ますみがスター女優にふんするメークを見た仲間から「上沼さんに似てるんと違う?」と声があがった。

当初は上沼を意識していたわけでもなかったが「それなら」と考え直してメークや声、口調も本人に寄せていくと、さらに評判を集めた。「おもしろい女芸人が大阪にいるぞ」と、東京の全国ネット番組に呼ばれることも増えた。

ますみ 上沼さんご本人に会うまではドキドキものでしたが、実際に対面してごあいさつすると、とても喜んでくださって。「(モノマネなら)いくらでもやってちょうだい」と言ってもらえました。お会いしてみたら、想像以上にめっちゃキレイな人なので、びっくりしました。

露出が増えれば、女優ならさらに美しくなっていくというのが定説。だが、そこは芸人。ますみの場合は仕事が増えていくにつれて、体重が増加していった。NSC入学当時は56キロだったが、気がつけば80キロに。急な不幸で喪服が必要になり、店に出向いたら、店員はますみの体形をじろっと見たうえで、なんとサイズ23号を用意した。

ますみ せいぜい15号ぐらいだろうと思っていたら、用意されたのがまさかの23号! さすがに「これは大きすぎるやろ」と試着したらピッタリでした。店員さんは、さすがにプロでした。

食べるのが大好きなこともあって、その後も体重は増減を繰り返すが、ことし2月の舞台でハプニング発生。漫才の流れで、ますみがしゃがみこむポーズを取った際「ボキッ」と嫌な音が鳴り、ひざに激痛が走った。1歩も動けないまま漫才終了。幸い、安静にするうち痛みは治まり、病院の世話になることはなかった。

しかし、ひざ痛に加えて股ずれにも悩まされ、徐々に歩くことがつらくなった。歩けないと、さらに体重増という悪循環。そこに腹痛が重なり、かつて看護師として患者の世話をしていた本人が満身創痍(そうい)に。おなかの肉が邪魔をして、今では自分で足の爪を切ることさえできなくなった。

竹内 自分では無理なので、相方の私が爪切りを担当しています。ますみちゃんは30代にして介護が必要になりました。この先、どうなることやら。

腹痛も深刻。昨年4月からKBS京都ラジオ「天才ピアニストと澤武のせやけどアレやね」に出演中だが、生放送4時間の長丁場。放送中であろうと腹痛は許してくれない。さっきまで普通に話していたますみの声が、突然聞こえなくなったときは、急きょトイレに駆け込んだものと理解してよいという。

とはいえ、2人の関係は良好で、けんかしたこともほとんどない。一緒に食事や飲みにいくことも多い。お互いに社会人経験があることで、それぞれを認め合う間柄でもある。

漫才では、存在だけで笑えるますみに対して、竹内の「○○よね」「○○やね」というソフト口調でのツッコミが特徴的。

竹内 女性の漫才の場合、切れのある強い言葉でのツッコミでは伝わりにくいのではないかと思ってました。表現をマイルドにして、観客に同意を求めるスタイルでやっています。私は京都出身で、京都人の特性でもある「えん曲的ツッコミ」が自分に合ってるような気がします。

2人の共通点は「負けず嫌い」。当然、Mー1グランプリ、キングオブコントといった次のタイトル奪取に向けて意欲を燃やす。

ますみ 上方漫才コンテスト優勝で、想像以上の爽快感を実感しました。こんなに気持ちええものやと。やはり勝負に出る限りは、1等賞でないとダメですよ。

竹内 本音を言えば、取れるものは全部取りたい。私も1位でないと満足できません。

向上心は強い。ネタ作りを担当する竹内は、決まった日までにネタを書き上げるため、ひとりで黙々と机に向きあう。サボれば、その分だけ売れるのが遅れると信じているからだ。ストイックでさえある。

ますみ 竹内さんの仕事にかける真面目さは素晴らしい。なかなかマネできないです。

まさに継続は力。単独ライブはほぼ毎月開催し、YouTubeで毎夜発信するラジオ番組「深夜おでん」は通算700回を超えた。ことし春からは大阪名物「551 HORAI アイスキャンデー」のCMに出演中。

ますみ このCMが決まったときはうれしかったですね。子どものころから、なるみさんのCMを見てましたから。そこに自分たちが出られるんだから感激です~。

竹内 2人のラジオは続けられなくなるまでやりたいですね。毎日アップするのは楽じゃないけど、スマホひとつあれば場所はどこでも録音できるので。適当なスペースが見つからなくて(よく出演する)森ノ宮漫才劇場の女子トイレで録音したこともありました。

二人の気分転換であり、ささやかなぜいたくでもあるのが、居酒屋で飲む生ビール。ここにも独特のこだわりがあって、1杯380円以下でないと気持ちよく飲めないという。

ますみ 東京では1杯600円とか700円とか、とても私たちには飲めないですよ。

竹内 値段を見るだけでビビります。もっとおカネを稼げるようになったら考えが変わるかもしれないけど、でもその辺の価値観は変わらない人でいたいですね。

真面目、努力家、庶民感覚。いわゆる芸人イメージとはかけ離れている天才ピアニストだが、着々と成長を続けている。漫才とコントの二刀流で天下取りに挑む。

◆天才ピアニスト

2016年(平28)5月コンビ結成。21年「女芸人No.1決定戦THE W」準優勝。22年「NHK上方漫才コンテスト」優勝。ABCテレビ「ニュースおかえり」金曜レギュラー。KBS京都ラジオ「天才ピアニストと澤武のせやけどアレやね」出演中。

竹内知咲(たけうち・ちさき)

92年1月28日、京都市生まれ。高校の生物教師を経てNSC(吉本総合芸能学院)入学(38期)。趣味は読書とお酒。Mr.Childrenのファン。

ますみ87年4月28日、奈良県大和高田市生まれ。看護師として病院勤めしながらNSCへ(38期)。趣味は果実酒作りとお酒を飲むこと。特技はモノマネ、採血。