男子5000メートル(視覚障害T11)決勝で、和田伸也(40=賀茂川パートナーズ)が銅メダルを獲得した。タイムは15分54秒29で、自らが持つ15分50秒87の日本記録にはわずかに届かなかったが、安定した走りで同種目2大会連続の銅、マラソンを含めれば4大会連続のメダル獲得になった。

 和田は2000メートルを過ぎでトップグループ後方にピタリとついた。それからは1周75秒のラップを刻み続ける。現地時間午後8時スタートのレース。薄暮のロンドンのトラックを、赤と白のユニホームが時計の秒針のように正確に周回した。最終周には2位を狙ってギアを上げる底力も見せた。「最高の結果になった。トップのケニアの選手(リオ金のキマミ)のペースが上がらなかったので、うまくついていけました。また新たなページを開けた」。13歳下の伴走者と並んでレースを振り返る和田の顔に、会心の笑みが広がった。

 パラリンピックは12年のロンドンが初出場。5000メートルで銅メダルを獲得した。昨年のリオで連続メダルを取りにいったが、1500、5000メートル、マラソンとも入賞止まり。「悔しさから強化に一段と力を入れました」。課題だった足首の固さを解消するメニューを取り入れ、持ち味の正確な走りに推進力も加わってきた。

 世界選手権は今回が4大会連続出場になる。マラソンで11年銅、13年銀から5000メートルで2大会連続銅とメダルを着実につないできた。高校2年の時に網膜色素変性症と診断され、大学3年で視力を失った。運動不足解消のために20代後半から走り始め、30代になって記録を伸ばし続けてきた。今や中長距離でアジアのトップに君臨する。9日に40歳になったが「まだ若い選手には負けない」と、20年東京へ進化を続ける。

 ◆和田伸也(わだ・しんや)1977年(昭52)7月9日、大阪府生まれ。大阪・生野高-関大。中学時代からラグビーを始め、高2までプレーしていた。06年に視覚障害者クラブの賀茂川パートナーズでランニングを始める。国内大会で好成績を収め、10年アジアパラ5000メートル4位。14年の同大会では800、1500、5000メートルで3冠。176センチ、62キロ。