18年冬季ピョンチャン(平昌)パラリンピック女子アルペンスキー座位で大回転の金を含む5つのメダルを獲得した村岡桃佳(23=トヨタ自動車)が14日、オンラインで取材に応じ、あらためて陸上100メートル(車いすT54)で21年東京大会出場、22年冬季北京大会でのメダル獲得を目指すことを明らかにした。

「この1年間陸上に専念してきて、選手としての自覚が芽生えてきたと思う。スケジュール調整が難しくなったが、東京、北京の両パラリンピックに出場できるよう、全身全霊をかけて頑張っていきたい」

村岡は慎重に言葉を選びながら決意を語った。本来なら今夏の東京大会に出場後にスキーに復帰する予定も、新型コロナウイルス感染拡大の影響で1年延期。昨シーズンはスキー選手としての活動を休んだが、今年は9月まで陸上に力を注ぎ、その後は来年にかけて両競技に交互に取り組み、国際大会に出場する予定を立てた。

「スキーに戻るべきか、陸上を続けるべきか悩んだこと自体が私のモチベーション。現時点で東京の出場圏内にいることで陸上を諦めることができなかった。自国開催で家族や友人、サポート、応援してくださる方々、そして国民のみなさまにもたくさん見ていただける機会ということも原動力になる」

小・中学校時代に陸上の経験がある村岡は、昨年5月から東京大会の金メダル候補・佐藤友祈らが所属する岡山県の車いす陸上クラブ「WORLD-AC」を拠点にトレーニングを開始。同6月の日本選手権100メートルで2位になり、本格的なトラックデビューを果たした。1カ月後の関東選手権で17秒38の日本新をマークし、その後、東京大会を目指すことを表明。今年1月にはオーストラリアの国際大会で16秒34と1秒以上も自らの日本記録を記録を更新し、東京出場を争う世界ランキングで圏内の6位に浮上していたが、予選期間も来春まで延期された。

「陸上とスキーは使う筋肉も動きもまったく違う。1年以上スキーに乗っていないし、どうなるか。両立の経験もなく不安です。でも、私は欲張りなんで…。東京が終わった後(北京まで)半年しかないんですが、そんなに短い期間でパラリンピックに出場した選手はいないと思うので、その第1号になれるように頑張りたい」

厳しいスケジュールをこなしながらトラックでもゲレンデでも結果を残し続けなければならない。悩みに悩んだ村岡が出した結論は、前代未聞のチャレンジだった。【小堀泰男】

◆村岡桃佳(むらおか・ももか)1997年(平9)3月3日、埼玉県深谷市生まれ。4歳の時に横断性脊髄炎にかかって両下肢にまひが残り、車いす生活に。小学3年生でチェアスキーに出会い、中学2年生から競技会に出場。パラリンピックには正智深谷高在学中の14年ソチ大会に初出場し、大回転で5位。早大進学後の18年平昌大会では大回転金メダルをはじめ出場5種目すべてでメダルを獲得した。18-19年シーズンW杯総合王者。早大大学院在学中でトヨタ自動車所属。血液型AB。