男子100メートル平泳ぎ(知的障がいSB14)で山口尚秀(20=四国ガス)が、自らの記録を更新する1分4秒13の世界新をマークした。山口は昨年9月の世界選手権(ロンドン)で初出場ながら1分4秒95の世界記録で優勝し、東京パラリンピック代表に内定している。

新型コロナウイルスの影響で今年1月以来のレース。自粛期間を中心にプールに入れない時間も長かった。そして、初めて泳ぐ宮城県のプール…。いっぱいあった不安を力強い泳ぎで振り払った。前半50メートルは29秒78。折り返してもストロークとキックは衰えなかった。「コーチにはいつも前半、30秒を切るように言われています。後半もうまく力の加減ができました。代表のチームメートと久しぶりに会えたのもうれしかった」。山口は笑みを隠すように言った。

昨年、彗星(すいせい)のように世界に飛び出した。2月メルボルン、5月シンガポールの国際大会で銀、銅メダルを獲得。世界選手権決勝では世界で初めて1分5秒の壁を破って優勝した。その記録をこの日、自ら塗り替えて東京パラリンピックへの期待もふくらんでくる。

「反省点を見つめ直して取り組んできた。練習したことが出せました。来年へ向けては、より高い意気込みで練習に取り組んで、自分の記録を更新して優勝したい」。愛媛県今治市生まれ。10月28日に20歳になったばかりの187センチの世界規格のスイマーが、パラリンピック王者へ着実に近づいている。