女子55キロ級の日本記録保持者・山本恵理(37=日本財団パラリンピックサポートセンター)が、1階級上の61キロ級で2人出場の2位に終わった。1回目に60キロをクリアしてスタートしたが、65キロを2回続けて失敗。バーベルは押しあげたものの、ともに3人のジャッジが赤ランプ(失敗)の判定で、同重量に成功した龍川崇子(44=EY Japan)に及ばなかった。

「今日は2回(65キロを)あげ切ったことに可能性を感じています。私は東京(パラリンピック)は無理なんじゃないか、という気持ちが払拭(ふっしょく)されました」

メディアのインタビューに応じる山本の表情は、黒いマスク越しでも明るかった。昨年8月に亜急性甲状腺炎を患い、10月のチャレンジカップ京都は欠場を意義なくされた。一般的な症状は発熱や甲状腺の痛み、全身倦怠感などとされ、正確な原因は明らかになっていない。

「一時は50キロもあげられなくなって、病気の影響の大きさを感じました。まだ、寛解というわけではなく、病気と共生しながらトレーニングしている状況です」

治療でステロイド薬を服用しているためにウエートコントロールが難しく、この大会は61キロ級でのエントリーになった。仕事としてパラスポーツの普及、啓蒙活動に取り組み、自らがアスリートとして東京パラリンピック出場を目指していることでも注目されてきた。新型コロナウイルス禍の収束が見通せず、東京五輪・パラの開催に関しても否定的な報道が目立つようになっている。それでも山本には不安も迷いもない。

「東京大会ができるかできないかは、私にはコントロールできない。だから、挑戦できるところで自分の実力を発揮するのが一番。パラ選手がコロナ禍の中で伝えられることは、困難が目の前に迫ってきてもそれを突破できる力だと思います。今回、私に今できることは、61キロ級で65キロを目指すことでした」

本来の55キロ級の自己ベスト63キロは日本記録だが、東京パラ出場標準記録(MQS)の65キロには届いていない。3月に英マンチェスター、6月にUAEドバイで開催されるW杯でMQSを突破し、出場権を争うパラランキングで8位以内に浮上しなければならない。

「3月の大会に派遣していただけるのなら、55キロ級で出場できるように調整していきたい。職場の仲間、支えてくれる人たちがいるから頑張れる。みなさんに元気を与えられる試技、3秒間に自分のすべてをかけたい」

山本の表情は最後まで明るく、コメントは力にあふれていた。

◆パラ・パワーリフティング 下肢障がい、低身長の選手が対象で、台上にあおむけになった状態でバーベルを押し上げて重量を競うベンチプレス競技。東京パラでは男女各10階級が行われる。MQSクリア、IPC指定国際大会出場、東京パラランキング8位以内の条件を満たした男女160人に加え、推薦選手20人の計180人が出場予定。