競泳男子200メートルバタフライで坂井聖人(21=早大)が1分53秒40で銀メダルを獲得した。終盤の激しい追い上げで、早大の先輩の瀬戸大也(JSS毛呂山)を抜き、金メダルのマイケル・フェルプス(米国)に100分の4秒差まで迫った。ラスト50メートルで失速して4位に終わった昨年の世界選手権の反省を生かした。

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 0秒14差。昨年から坂井が心に刻んだ数字だ。初出場した昨年の世界選手権。男子200メートルバタフライ決勝でラスト50メートルまでは3位につけた。メダルはほぼ手中にしていたが、最後のタッチが流れて4位に終わった。残り50メートルからは腕が上がらないと感じるくらい疲労困憊(こんぱい)。この1年は、そのスタミナ強化が重点課題だった。

 昨秋のW杯シリーズでは、専門外の400メートル、1500メートル自由形などに積極的に出場した。「心身ともにタフになった」。11月下旬からは標高2100メートルの米フラグスタッフで約1カ月の高地合宿を敢行した。五輪前には標高2300メートルのメキシコで直前合宿。スタミナ不足を克服し、万全の状態でリオ入りした。

 男子400メートル個人メドレー銅メダルの瀬戸に憧れ、早大に入学した。瀬戸のことは今も慕っているが、水泳に関しては違う。「瀬戸さんの上にいかないと、海外勢にも勝てない」と今年に入ってから、あえて「瀬戸さんに勝つ」と公言するようになった。自らを追い込むことでさらに練習にも身が入った。

 「特異体質」の強化もメダル獲得につながった。子供の時から簡単に肩を外し、すぐに戻せる。福岡・柳川高時代までは肩を外しながら泳ぐことも多かった。早大に入ってから本格的に筋トレを始めて肩を固め、丁寧に水をかくストロークに変えたことで、記録もさらに伸び始めた。

 男子200メートルバタフライは04年アテネ大会銀の山本貴司、08、12年ロンドン大会銅の松田丈志と、3大会連続でメダリストを出していた。代表選考会を兼ねた4月の日本選手権で個人種目の代表から漏れた松田から「任せたぞ」と言われた。大先輩との約束を守り、しっかりと伝統を引き継いだ。【田口潤】