侍ジャパンの岩崎優投手(30)が、決勝の舞台で真価を発揮した。1点リードの8回無死一塁。米国のクリーンアップを迎える緊迫の場面で出番が回ってきた。迎えた3番カサスは3本塁打をマークしている強打者。低めに丁寧に集め、フルカウントから外のスライダーで空振り三振。勢いに乗ると、後続2人はわずか4球で打ち取った。

「自分の仕事ができて良かったです」

冷静なスタイルは大舞台でも変わらない。2日の米国との決勝トーナメント初戦でも、4回2死二、三塁でワンポイント起用され、わずか1球でピンチを切り抜けた。球持ちのいい唯一無二のフォームで、金メダルにつながる無失点リレーの一員になった。

今季阪神では「8回の男」として、白星を守り続けた。首位快走に貢献を続けたが、蓄積疲労で6月4日に出場選手登録を抹消された。2軍でリフレッシュ期間を経て、同16日に再合流。侍ジャパンメンバー入りが発表されたのは、ちょうどその日だった。

今大会、チーム内で左腕は大野雄と2人だけ。初の国際舞台。緊迫した場面にも、平常心で立ち向かい続けた。ここぞの場面で、本来の姿を見せた。

マウンドでは貫いてきたポーカーフェース。表彰台で並んだ森下から金メダルを首に掛けられると、赤いマスクの下でほおが緩んだ。13年の阪神入団時はドラフト6位。これまで大舞台には縁がなかった。初めて胸につけた日の丸が、柔和な笑顔とともに輝いた。【磯綾乃】