世界が注目するアスリートが、やはり今大会の“顔”になった。開会式で、聖火の最終点火者に選ばれたのは大坂なおみだった。母の日本、父のハイチ、そして自らが育った米国の3カ国に関連する多様性こそ、日本の未来を照らす明かりだった。

大坂は、自身のSNSに、素直な感動を書き込んでいる。「間違いなく、私の人生の中で、最も偉大な名誉。言葉にできないほど、今は感謝の気持ちでいっぱい」。そして「まだ何が起きたのか頭の中で整理できないほど興奮している」と振り返った。

4大大会に初優勝した18年全米以降、かかる重圧と期待で、「うつ症状」に苦しんできたことを告白した。世界の約40億人が注目する聖火を点灯する瞬間は、復帰の場。聖火台の階段は、自らを奮い立たせるステップでもあったのだ。

聖火台に続き、25日には「心のケアがおろそかにされている」と会見拒否をした全仏1回戦以来、コートという舞台に立つ。約2カ月ぶりの実戦の対戦相手は、同52位の鄭賽賽(中国)だ。多彩な球種を使う巧者で、20年全豪2回戦で、大坂は少してこずった。

今回の有明のハードコートは、バウンドしてからの球足は遅く、弾む。大坂にとって、得意の強打が一発で決まらない可能性もある。苦手とされる耐える気持ちが試される。世界の希望の火をともした大坂が、今度は自らの闘争心に火を付ける。【吉松忠弘】