初出場の山田美幸(14=WS新潟)が、パラリンピック日本史上最年少のメダリストになった。女子100メートル背泳ぎ(運動機能障害S2)予選を全体3位で突破した山田は、決勝は2分26秒18で銀メダルを獲得。今大会日本選手第1号メダルに輝くとともに、1984年ニューヨーク大会陸上男子100メートル(視覚障害)銅メダルの嶋津良範が持つ16歳の最年少メダル記録を大幅に更新した。

山田は「予選の結果が全体3位で、銀メダルをとれるとは思ってなくて、本当にうれしいです。予選であれだけ緊張したんだから、決勝はそれ以上に緊張することは間違いなしと思って。開き直って、形だけの笑顔を作って楽しんでいこうと思った。コーチからストロークはゆっくりでいいとアドバイスを受け止めて、できるだけゆっくり、冷静に泳いだ。今までで一番頭を使ったレースでした」と笑みがはじけた。

「楽しんで、思い切り泳ぎたい」と話した通り、スタートから飛び出した。生まれつき両腕がなく、脚も左右で長さが違う。右足の力強いキックで推進力を生み出し、両肩を回しながら抵抗の少ない姿勢を保つ。パラリンピックデビューレースとは思えない堂々とした泳ぎで水に乗った。

予選の後、緊張を隠さずに言った。「水に入った時にガタガタ震えた。気持ちではなく、体で緊張を感じたのは初めてでした」。強心臓が持ち味だが、さすがに地元開催のパラリンピック。初出場で緊張するなという方が難しかったが、適度な緊張を力に変えた。

9歳の時、テレビで16年リオデジャネイロ大会を見て「パラリンピックで泳ぎたい」と誓った。前日の開会式はテレビ視聴。「知っている人たちが出てきて、楽しかった」と屈託なく笑った。10代選手の活躍に沸いた東京五輪の勢いのままにパラリンピックでも若手が活躍。山田が、日本チームに勢いをつけた。

◆山田美幸(やまだ・みゆき)2006年(平18)9月15日、新潟県阿賀野市生まれ。保育園の時に水泳を始める。15年に身体障がい者水泳の全国大会で優勝。17年のジャパンパラ大会では200メートル自由形を制し、19年の同大会では50メートル背泳ぎと100メートル自由形の2冠。現在は4種目で日本記録を保持している。阿賀野市立京ケ瀬中3年。

◆夏季パラリンピックの日本最年少記録 最年少代表は04年アテネ大会に13歳で出場した競泳の山田拓朗。前回大会までの最年少メダリストは84年ニューヨーク大会の陸上男子100メートル(視覚障害)銅メダリストの嶋津良範で16歳だった。同じく最年少金メダリストは88年ソウル大会陸上男子スラロームの竹村克明と、12年ロンドン大会ゴールボール女子の若杉遥で、ともに17歳だった(※大会資料によれば、生年月日不詳でどちらが最年少かは不明)。