東京オリンピック(五輪)は、小さな女王がトリを務める。大会最終日の8日、自転車トラック種目の女子オムニアムに梶原悠未(24=筑波大大学院)が個人種目としては日本人最後に登場する。20年世界選手権で日本女子初の金メダルを獲得。五輪トラック種目史上初の金メダルを目指す。また、日本発祥の男子ケイリンの決勝も行われる。最終日は、自転車競技から目が離せない。

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梶原は20年ドイツ・ベルリンで行われた世界選手権のオムニアムで金メダルを獲得し、世界女王として五輪を迎える。自転車競技を統括する国際自転車競技連合(UCI)公式サイトにも「2度五輪を制したローラ・ケニー(英)と、日本の世界女王梶原悠未との輝かしい対決が待っている」と紹介されており、世界的にもメダル候補に挙げられている。

武器は、短距離選手をもしのぐ瞬発力。身長155センチと小柄で、集団に入るとひときわ小さく見えるが「小ささを生かしたポジショニングと、爆発的なスプリント力を見てほしい」と語る。

20年の世界選手権ではスクラッチ1位、テンポレースも2位で終え、序盤からメダル争いに加わった。エリミネーションは筑波大の卒論テーマとして研究し尽くした種目。だが、途中で落車して左腕をひかれるアクシデントもあったが、規定周回内にレースに復帰。すぐさま相手を競り落として3位につけ、最後のポイントレースでもけがの影響を感じさせずに7ポイントを獲得して女王に輝いた。

「自転車競技は全く知らなかった」という母有里さんと二人三脚でメダルを目指して戦ってきた。「必ず金メダルを持ち帰るので、見守っていて」と宣言した梶原。中村妃智と組んだ6日の女子マディソンは途中棄権に終わったが、本命のオムニアム前に五輪の雰囲気を肌で感じた経験はプラスになる。当日は金のラメが入った勝負ネイルを施し、決戦の舞台に立つ。

<オムニアムとは?>

オムニアムは中距離4種目を1日で行い、総合得点で順位を決める。スプリントやケイリンなどと同じ、静岡・伊豆ベロドロームの屋内木製250メートルトラックで行われる。スピードや持久力と同時に、レース間隔が短いため、体力の回復力も求められる。

◆第1種目スクラッチ 女子7・5キロ(30周)の順位を争う。序盤は風よけのため、先頭を交代しながらレースを進めるが、ラスト10周前後からロングスパートをかける選手が出て、順位争いが激しくなる。

◆第2種目テンポレース 女子は7・5キロを走り、獲得ポイント数で順位を争う。毎周回1位通過のみ1ポイントが与えられ、周回遅れにすると20ポイントの大量得点が可能。2位通過ではポイントが獲得できないため、判断力と瞬発力が求められる。

◆第3種目エリミネーション 参加選手全員でスタートし、2周ごとに最後尾(自転車の後輪)が脱落するサバイバルレース。序盤はコース幅いっぱいに選手が広がるため、後方で行き場をなくすと早々に脱落し、順位を大幅に落とす可能性も。梶原は得意種目。

◆第4種目ポイントレース 女子は80周で、10周回ごと1位通過で5ポイント、2位3ポイント、3位2ポイント、4位は1ポイント。最終周回のみポイントが2倍。周回遅れにすると大量20ポイントを獲得できる。3種目までの順位によるポイントを持ち込んで戦うため、ライバル選手との点数差を計算しながら走る冷静な頭脳、戦略が求められる。【山本幸史】

◆梶原悠未(かじはら・ゆうみ)1997年(平9)4月10日生まれ、埼玉県出身。筑波大大学院在学中。筑波大坂戸高で自転車を始め、17年W杯第3戦(カナダ・ミルトン)に初優勝。20年世界選手権(ドイツ・ベルリン)で自転車競技の日本女子では初めての金メダルを獲得した。155センチ、59キロ。血液型O。