ホーム 東京オリンピック2020 サッカー ニュース RSS なでしこの「水を運ぶ人」中島依美「水」で恩返し 視野の広さピッチ外にも [2021年7月15日4時55分] 日本対オーストラリア 前半、パスを出す中島(左)(撮影・上山淳一) <国際親善試合:女子日本代表1-0女子オーストラリア代表>◇14日◇サンガスタジアムbyKYOCERA FIFAランク10位で初の五輪金メダルを目指すなでしこジャパンが、同ランク9位のオーストラリアに競り勝った。チームは15日に札幌入りし、カナダ(同8位)との1次リーグ初戦(21日、札幌ドーム)へ総仕上げに入る。 ◇ ◇ ◇悲願の五輪金メダルへ、欠かせない中盤の要だ。なでしこジャパン最年長でフル出場したMF中島依美(30=INAC神戸)が、地元関西で勝利に貢献した。前半7分にボランチの位置から前へ飛び出し、体を寄せて攻撃権を奪取。相手シュートは体でクリアした。攻撃では緩急をつけ、巧みにボールを散らした。視野の広さはピッチ外にも表れる。18年6月に起きた大阪府北部地震。中学、高校時代にボールを追った練習場が、高槻市にあった。滋賀の実家から2時間かけて通った同市は、最大震度6弱。高校時代に所属した、FCヴィトーリアの穂積一監督に電話をかけた。「監督、大丈夫ですか? 何か物資を送ります」恩師の自宅は3日間ほど断水し、その後も水が濁っていた。要望を聞くと、すぐに数日分の水を送った。地震後初めて関西で開催されたこの日の代表戦を、穂積監督はテレビで見つめた。地震から3年がたっても「あの時は本当に助かりました。優しい子なんです」と当時の恩は忘れない。かつて、男子の日本代表を率いたオシム元監督は献身的なボランチを「水を運ぶ人」と称した。中島にとって初の五輪。札幌開催の1次リーグ1、2戦は無観客だが覚悟を決めている。「お客さんがいない寂しさは感じるけど、やるべきことは変わらない」。なでしこの“水を運ぶ人”は、みんなの思いを背負い、大舞台に立つ。【三宅ひとみ】◆中島依美(なかじま・えみ)1990年(平2)9月27日、滋賀県野洲市生まれ。野洲小4年でサッカーをはじめ、中学時代は大阪高槻の下部組織でプレー。野洲高時代にはクラブチームのFCヴィトーリアに所属した。09年にINAC神戸に入団。11年代表デビュー。158センチ、50キロ。家族は両親と姉2人。