飛び込み競技-。14歳の玉井陸斗の活躍で知った人も多いだろうが、オリンピック(五輪)では1904年セントルイス大会から行われている伝統競技だ。28日の男子シンクロ板飛び込みには、日本人最多タイの夏季大会6回出場のベテラン寺内健(40)と坂井丞(28=ともにミキハウス)が登場する。テレビの前で知ったかぶりするために、五輪2大会出場の中川真依さん(34)にいろいろと聞いてみた。

   ◇   ◇   ◇

飛び込みは採点競技で、それぞれ異なる飛び込み6本(女子は5本)行う。ポイントは入水時の「音」。水面の一点に垂直に入っていくと「ズボッ」と鈍い音がする。いわゆるノースプラッシュ。「バシャ」という音で水しぶきが上がるほど減点。回りすぎた場合は「オーバー」。回転不足なら「アンダー」。これで、知ったかぶりができる。

10メートルのコンクリート台から飛ぶのが高飛び込み、弾力性のある飛び板を使うのが板飛び込み。ただ、テレビでは、気になる点が出てくる。そこで、08年北京大会高飛び込み11位、12年ロンドン大会にも出場した中川さんに、聞いてみた。

板飛び込みで気になるのは可動する板の根元にあるローラー。演技前に選手が回すが、おまじない?

中川 板の硬さを調整するんです。硬い方が技術的には楽ですが、筋力がないと踏み込めない。だから、選手それぞれが目盛りに従って、自分にあった硬さにするために目盛りを調整します。ただ、パワーがある外国人選手が飛ぶと、試合の最後の方はだいぶ軟らかくなっちゃうんです。

台の上から投げているのは何? 投げるなら持っていかなければいいのに。

中川 吸水性に富んだタオルで「セームタオル」といいます。ギリギリまで体を拭いて、水分を調整しているんです。脚などがぬれていると回転するときに抱えた手が外れやすい。結構繊細なんですよ。逆に乾きすぎた場合は、水分補給することもあります。

10メートルの高さから、どこに投げているの? 人に当たったら、痛くないの?

中川 それぞれ、どこに投げるか大体決めていますね。間違って、プールに入っちゃうこともありますけど。下を歩いていて当たることもありますよ。痛い! って。まあ、ケガするようなことはないですけど。

飛び込み台の後方には小さなプールがありますね。演技した後、選手がまったりと入って。お風呂?

中川 ありますよ。飛び込みプールは演技した後、すぐにあがらないといけないんです。次々と飛んできますから。体が冷えて動かなくなってしまうので、温まっているんです。ジェットバスの場合もあります。体を温めながら、終わった演技や次の演技のことなどを考えたりもしますね。

競技の小ネタを少しでも知れば、テレビ観戦のモチベーションも上がる。踏み切りから着水まで2秒ほどの瞬間芸ながら、飛び板で頭部を負傷する危険もある。真夏日に、家のテレビで見る飛び込み。「勇気をもらう」には一番の競技かもしれない。【荻島弘一】

<飛び込み>

男女の板飛び込み、高飛び込み、シンクロ板飛び込み、シンクロ高飛び込みの8種目ある。板飛び込みは弾力性のある飛び板を用い、高飛び込みは高さ10メートル(3階建てマンション相当)に固定された台から跳躍する。採点は10点満点からの減点法。踏み切りの方法、回転の方向、回転時のひねりや体の形、入水時の水しぶき、シンクロでは2人の同調が採点基準。男子は6本、女子は5本の演技の合計点で競う。入水時のしぶきは小さい方が高い評価。板飛び込みと高飛び込みは予選、準決勝、決勝が行われ、準決勝は予選上位18人、決勝には準決勝上位12人が進出。8組が出場のシンクロは決勝のみとなる。

男子高飛び込みで14歳の玉井は、5月のW杯で大技「109C(前宙返り4回半抱え型)」を解禁。「6245D(逆立ち後ろ宙返り2回2回半ひねり)」も準備して、メダル争いを視野に入れている。女子板飛び込みの三上も大技「5154B(前宙返り2回半2回ひねりえび型)」をメダル獲得へ武器としている。