初出場の向田真優(24=ジェイテクト)が金メダルをつかんだ。決勝で18、19年世界選手権銅メダルの■倩玉(中国)に5-4で逆転勝ちした。吉田沙保里が16年リオデジャネイロ・オリンピック(五輪)決勝で敗れて4連覇を阻まれた階級で、新たな主役となった。

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19年に女子は世界選手権で金メダル1個と苦戦した。当時は1年後に迫った母国五輪へ、強化陣は個別の選手対策を徹底する方針を説いた。6月、向田と志土地コーチの練習を見る機会を得た。そこで見たのは、まさに詳細な研究だった。

出そろっていた他15人の五輪出場者の映像を元に、仮想敵となった練習パートナーと組んで確認作業。「この手の置き方はどうかな」「うーん、もうちょっと内寄りにした方が良いかも」。2人の会話が熱を帯びた。試行錯誤で30分がすぐに経過した。

日本女子の伝統として、他の対人競技に比べ、映像分析にかける時間の少なさがある。徹底した練習こそが、金量産の結果を生んできたことは事実。例えば柔道などでは「残り何秒でリードされている時に、相手がかけてくる技」などのシチュエーション練習が進む。

志土地コーチは決まった練習メニューを持たない主義。向田の状態に応じて、柔軟に時間を使う。その中で数々の実戦機会を想定して、策を練る。「帰り道でもレスリングの話をしてます」と向田。2人で東京に来て手にしたものは、この研究時間1つでも大きかった。【阿部健吾】

※■はマダレに龍