「50%」。開幕間近になると決まって聞かれる「日本の1次リーグ突破確率は?」にそう答える。「なんだ、それ」と怒らせてしまうが、予想は難しい。確率などなおさらだ。4チーム中上位2チームが突破。だから「50%」になる。

過去の実績やFIFAランキング、対戦成績からチームの状態…、予想の材料はある。ブックメーカーはこれらをもとにオッズを設定するし、スポーツ専門のデータ会社も予想した数字を出す。解説者が予想し、ファンが激論を交わす。W杯の楽しみでもある。

同じE組にはドイツ、スペイン、コスタリカ。現実的に厳しい組なのは間違いない。英国のブックメーカー「ウィリアムヒル」の20日時点の1次リーグ突破オッズは、スペインが1・11倍、ドイツが1・14倍。対して日本は4・33倍、コスタリカは7・5倍。他社もほぼ同様で、世界の見方は「2強2弱」といえる。

確かに、ドイツとスペインの壁は高い。カナダに逆転負けした日本を見て、さらに不安は増した。チームとしての連動性が低かったからだ。ボールを奪う場面もチグハグで、攻めても久保らが孤立する場面があった。もともと繰り返し練習して連動性を高めるのが日本の強み。ところが、今回は各国リーグ戦を中断しての開催で、チームを熟成させる時間がなかった。

ドイツもスペインも時間はないが、同じクラブの選手で固める強みがある。伝統的にバイエルン主体のドイツは、今大会も中盤から前にズラリ。スペインは今回もバルセロナが多い。ドイツの19歳ムシアラ、スペインの19歳ペドリ、18歳ガビらが力を出せるのも、同じクラブの選手が周りにいるから。代表で改めて練習するまでもなく、すでに高い連動性を持っている。

日本もアジア予選の終盤で川崎F出身選手たちがチームを救った。W杯出場を決めたオーストラリア戦では守山-山根-三笘の「Fライン」で先制ゴールも奪ったが、ドイツやスペインのように「ライン」がチームの柱になっていない。準備期間の短さは、日本にとって不利に働きそうだ。

ただ、本番の勝ち負けとなると話は別。14年大会優勝のドイツは、18年大会で1次リーグ敗退。10年大会優勝のスペインは14年大会で決勝トーナメント進出を逃した。逆にコスタリカは優勝経験3国と同組だった14年大会で1位通過。波乱を挙げたらきりがない。

入る点数が少ないサッカーは、最も番狂わせが起きやすい球技と言われる。だからこそ、世界で最も盛んなスポーツになった。予想がつかないことが起きるから楽しいし、応援のしがいがある。準備期間が短い今大会は、けが人はコンディション調整など不確定な要素も多くなる。さらに、波乱は起きやすくなる。

予想を裏切り、その上を超えてくるからこそサッカーは面白い。応援のしがいもある。日本の1次リーグ突破は過去6大会で3回、つまり「50%」。どうなるか分からない。だから、W杯は世界中を沸かせる。

【荻島弘一】(ニッカンスポーツ・コム/記者コラム「OGGIの毎日がW杯」)

19日、パス回しをする鎌田。右は久保(撮影・江口和貴)
19日、パス回しをする鎌田。右は久保(撮影・江口和貴)