韓国がポルトガルを破って、決勝トーナメントに滑り込んだ。1-1で迎えた後半ロスタイムにFW孫興民が超絶スルーパス。2-1と逆転勝ちし、ウルグアイを総得点で上回って12年ぶりの1次突破を決めた。

ポルトガルとは02年日韓大会以来の対戦だった。同じく1次リーグ最終戦で1-0と勝利したが、相手2選手が退場。誤審が相次いだイタリア、スペイン戦とともに「疑惑の試合」にあげられた。しかし、今回はVARの監視下で文句なく「ちゃんと」勝った。

これで、決勝トーナメント進出のアジア勢は過去最多の3チーム。ウルグアイ敗退でブラジルとアルゼンチンだけになった南米勢を上回った。欧州と南米が中心だった世界のサッカー地図が変わってきた。

アジア躍進の陰に「テクノロジー」あり、は言い過ぎだろうか。前回大会から導入されたVAR、今大会はより精巧になり、半自動オフサイド判定システムも加わった。これが欧州や南米の勢いをそいでいる。

「公平なのだから、どっちもどっち」と突っ込まれそうだが、ここまでは「弱者」が有利に思える。日本戦でのドイツの2点目やサウジアラビア戦でのアルゼンチンの2点目は、いずれもオフサイドで取り消し。入っていれば、流れは変わった。スペイン戦の三笘の1ミリが認められたのも機械の力。VARが勝敗に影響を与えた試合は多い。

主審の判断は、どうしても「強者」に傾く。「ドイツは最後に勝つ」「これを決めるのがアルゼンチン」…。潜在意識が時に公平さを失わせる。かつてプロ野球には「王ボール」があった。「大打者が見逃すのだからボール」と判定。無意識のうちに下す「強者」有利の判断は否定できない。

強豪国には「審判の判断を狂わすのも技術」とする考えもある。言葉は悪いが審判を「欺く」ことが容認される。「ずるをしてもOK」「見つからなければいい」と。アルゼンチンMFマラドーナの「神の手」はその最高峰。世界的には明らかなハンドも、同国内では称賛されるという。

日本選手には「マリーシア(ずるさ、狡猾さ)がない」と言われる。世界で勝てない理由にもされた。確かに駆け引きなど足りない部分もあるが、それでも日本は正々堂々と戦うことをやめなかった。育成年代から「ずるはダメ」と指導するのが日本サッカー。少年からJリーグ、代表まで、ぶれずに続けてきた。

VARは審判の判断を助けるとともに、審判の目を盗む「ずるさ」を厳しく排除する。それが、日本などアジア勢の躍進につながった。ドイツ、スペイン戦の勝利は、日本が愚直にルールを守り、まじめにサッカーに取り組んできたことへの「ご褒美」でもある。【荻島弘一】(ニッカンスポーツ・コム/記者コラム「OGGIの毎日がW杯」)

日本対スペイン 後半、VARのチェック後、ゴールが認められ、歓喜する田中(左から2人目)。左端は長友(2022年12月1日撮影)
日本対スペイン 後半、VARのチェック後、ゴールが認められ、歓喜する田中(左から2人目)。左端は長友(2022年12月1日撮影)