本田圭佑が2022年1月18日、現役引退を発表した。

サッカー元日本代表のあの本田圭佑でなく、こちらは日本フットボールリーグ(JFL)の東京武蔵野ユナイテッドFCに所属する同姓同名のMF。2014年に平成国際大から加入し、8年の所属でJFL通算160試合15得点。

クラブのホームページに「自分のサッカー人生、最後まで後悔なくやりきったと思います。辛い時期もありましたが、思い返せば楽しかった思い出ばかりです。引退した今、一番に思い浮かぶのは感謝の気持ちです。小学生の時からサッカーを始め、今までたくさんの人と関わってきました。全ての皆様にこの場を借りて、感謝を伝えたいです」で始まるコメント。ここまで関わった全ての人に対し、丁寧にお礼を述べるその言葉には、優しく実直な人柄があふれ出ていた。

同姓同名に興味を抱き、この「ケイスケ・ホンダ」を2017年8月に取材した。中盤の黒子タイプで自らを「アリ」と表現していた。雄弁な元日本代表の本田とは違い、こちらは自他ともに認める無口な性格だった。当時の本人とのやりとりはこうだ。

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-そもそも同じ名前だと、いつ気づきました?

「本田選手が日本代表か、ユース(の時)か…、あれって感じで」

-気になったでしょう。当然、意識しますよね?

「あそこまでスーパープレーヤーなんで、なかなかないですよ。あんまり気にしないようにしています。『ただ名前が一緒だから』ってだけなので」

-これまで散々名前でいじられたでしょ?

「そうですね…。大学の時はそこまで広まっていなかったんで。ほんのちょっとだったんですけど、ここ(東京武蔵野)に入団することになって、ニュースリリースが出た時にネットで広まりました。地元(新潟の)の人からもすごい連絡がきて」

-こちらの本田選手は何が持ち味ですか?

「テクニックとかそういうのがストロングポイントではないので、いっぱい走って、周りをサポートして、相手を疲れさせて。そういうところで貢献できれば」

-昔からこういうスタイル?

「高校(新潟工)まではどちらかと言えば攻撃ばかりが好きで、自由にやっていました。大学(平成国際大)ではそれが通用しないことが分かって、監督から『お前の持ち味はそういうところじゃない』と言われて。それで運動量だったり、ボール出しだったり。大学の先輩にも同じスタイルのプレーヤーがいたので、それをまねしていいところを盗んだ。そうしたら、こういう感じのプレーヤーになりました」

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当時指揮していた吉田康弘監督に本田について話を聞くと、「使い勝手のいい選手。FWもできるし、どのポジションでもそつなくこなせる賢い選手であり、自分が何をすべきか整理されている。本当にクレーバーで波がない。いつでも平均点以上を出せる」と厚い信頼を口にしていた。

アマチュア選手として、昼間はクラブから仲介された勤務先で「配送業」にいそしみ、午後7時からの練習に励んでいた。昨年3月の開幕戦でもプレーしている姿を見た。まじめでチームに欠かせない選手だった。多くのケガを乗り越え、8シーズンで積み上げた160試合は誇れる数字だ。

物理学者のアインシュタインは言った。

「天才とは努力する凡才のことである」

その真摯(しんし)なサッカーに対する姿勢は、必ずや次の人生に生かされるに違いない。【佐藤隆志】