サッカーが戻ってくる。27日、Jが再開する(J1は7月4日)。最初はリモートマッチ(略してリモマ、無観客試合)で行われ、7月10日以降は、入場制限を設けながら部分的にサポーターを入れて試合をこなす。

本当に試合が実施できるか。新型コロナウイルスの第2波、第3波が来た時は、また試合できなくなるのか。クラブに感染者がまん延した時の対応など、心配は尽きない。新型コロナ禍で萎縮した我々の危機感も、プロ野球の開幕、大相撲の再開、Jリーグの再スタートによって、少しは緩和されるだろう。

リーグ戦再開に当たって、Jが最も心配するのは、再開可否だろう。プロ野球が開幕したのだから、心配ないはず。JはNPBと合同で専門家を交えた対策会議を定期的に開いてきたし、政府方針に従って再開日を決めたわけだから。部分的に、PCR検査で陽性反応を示した選手が大量に発生するなど、クラブごと地域ごとの心配はあるくらいだと、思っている。

個人的な心配は、全日程を消化するため、夏場にも週2ペースで試合を組んだことだ。夕方でも30度を超える。湿度70%を超える日が続くこともある。地球温暖化が進み、さらに高温多湿化する夏に週2度の頻度で試合をこなすことは相当なリスクがある。交代枠を5人に増やして解決できる問題ではない。

個人的な印象だが、優秀な外国人選手が夏場に結果を出せなかったりケガが多いのは、これに一因あると思っている。選手によって治療を理由に帰国してしまうケースもある。今年開催されるはずだった東京オリンピック(五輪)もマラソンなどは、選手の安全を第一に考え、暑さを避けて札幌で行われることが決まっていた。

Jリーグは過去、何度かシーズン制移行の会議を各クラブとともに開いた。しかし、会議を開く前から聞こえてくる話は「無理」の2文字だった。主な障壁は「(1)雪国問題(2)スタジアム確保問題(3)スポンサー問題」の3点だ。

(1)雪が多い地域は、試合当日はともかく、普段の練習にも影響があるので公平性に欠ける。(2)スタジアム確保は、各行政が毎年、利用施設の振り分けをする際、年をまたいでやることはほぼないので、シーズン通しての確保が難しい。(3)スポンサー契約は1月からの1年ごとの更新が多く、シーズンを移行する年の契約料の換算が難しい。しかも昇降格があるため、翌シーズンの金額までは組みづらい。

プレーヤーズファーストは、選手だけのものではない。選手が安心してプレーできるように、クラブが営業努力すること、自治体の協力、サポーターのバックアップも、それにつながる。ただ、選手が試合中に最高のパフォーマンスを出すことだけを考えたら、やはり秋から始まって、冬を乗り越え、春に最終決着の場を設けた方が、間違いなく最強の能力を引き出すことができるはずだ。

リモマや入場制限は、1年前までなら想像もできなかった。でも我々は、それを乗り越えてここまで進んできた。シーズン制移行だって、再考の余地はあるはず。再開にあたって、Jやサッカーに関わるみなさまに感謝しつつ、シーズン制移行を考えるきっかけになってほしいと、願う。【盧載鎭】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「サッカー現場発」)

◆盧載鎭(ノ・ゼジン)1968年9月8日、ソウル生まれ。88年来日し、96年入社。20年以上、主にサッカー担当。新型コロナウイルスが怖くて自粛生活を続けている。先週末、県またぎがオッケーになった記念に、家族で日帰り旅行に出掛けたが、車で3時間走ってたどり着いたのは、檜原村(東京都)だった。結局、県はまたげなかった。