<アジア杯:日本1-0オーストラリア>◇29日◇決勝◇カタール

 【ドーハ(カタール)=30日】日本代表DF長友佑都(24=チェゼーナ)がアジア王者の誇りを胸に、欧州ビッグクラブへの飛躍を誓った。オーストラリア戦の延長後半4分、左サイドで相手DFを振り切り、絶妙なクロスを上げて、FW李忠成(25=広島)の左足ボレーでの決勝弾をアシストした。今大会全6試合にフル出場し、世界レベルの運動量とスピードで優勝の立役者になった長友は、一夜明けて、今夏の強豪クラブへの移籍希望を明言。14年W杯ブラジル大会へ向けて、さらなる成長を自らに課した。

 ドーハの歓喜から一夜が明けた。日の丸戦士は解禁されたコーラで乾杯し、祝福を分かち合った。喜びと達成感に浸ったのは一晩だけ。DF長友の目は、すでに世界へ向いていた。この日早朝、イタリアへの出発前に今夏の欧州強豪クラブへの移籍希望を明かした。

 長友

 ステップアップしたい気持ちが強い。今年の夏にはビッグクラブへ移籍できるよう、この半年間を大事にしたいですね。

 昨年のW杯南アフリカ大会後から、セリエAでプレー。持ち前の運動量と両サイドをこなす器用さは高評価。今冬もユベントスやACミランが獲得意思を見せたが、この日までに東京からチェゼーナへ完全移籍した。さらなるレベルアップを図り、まず今季終了後の移籍をにらむ。

 アジア杯は全6試合にフル出場した。開幕前「侍になりたいけど、まだ刀じゃなく割り箸だね」と言っていた懐には、「自信」という武器を備えた。

 長友

 優勝して中くらいの刀かな。世界一のサイドバックになることを目指しているから、ここで満足しちゃいけないけど。でも刀1本手に入れた感じ。この刀は重みがありますね。

 決勝の延長後半4分、両チーム最小170センチの男のギアが入った。左サイドラインぎりぎりでMF遠藤からボールを受けると、DFウィルクシャーを振り切る。相手DF3人を越えたファーサイドへのクロスは、FW李にどんぴしゃだった。「(李が)見えていた。相手も疲れてたんでね」。無尽蔵のスタミナを見せつけた。

 決戦直前。「優勝してユニホーム持ってよ」と電話があった。右足負傷で入院したばかりのMF香川だった。「分かりましたよ真司さん、って。アイツの気持ちもね」。試合後は香川の白い「背番号10」を大きく広げた。香川からはイタリア語で「ありがとう」を意味する「グラッチェ」とメールがあった。「本当は『グラッツェ』だからね。本場の発音はうるさいよ」。チーム一丸でつかんだ単独最多4度目のアジア制覇。サムライユートが世界の頂点を狙う準備はできた。【近間康隆】