日本代表バヒド・ハリルホジッチ監督(63)が日刊スポーツなどのインタビューに応じた。

 昨年3月に就任しW杯アジア2次予選は5勝1分けでE組首位に立つ。事あるごとに日本サッカーに物申す強烈なキャラクターで存在感を示す指揮官が大いに語った。

 元日付紙面では掲載しきれなかった部分も含め、新春ロングインタビューとしてお届けする。【取材、構成=八反誠】

 ◆若手登用に積極的で、五輪のアジア最終予選に臨むU-23(23歳以下)日本代表にも大きな期待を寄せている。すでにこの世代から遠藤航、南野拓実を招集しAマッチに起用してチャンスを与えている。

 「もっと若い選手に、数多くJリーグでプレーする機会を与えてほしいと思っています。オリンピックのことを考えた時に、とても大きな意味を持つはずです。オリンピックを目指すチームの先発の中に何人、J1やJ2で先発している選手がいるのか。ヨーロッパでは20歳、21歳はすでに先発で出ている。日本では、若い世代を信頼して起用していない状況が、かなりあるのではないか。オリンピックを目指す上で、非常に大きな問題になっています。

 国民のほぼ全員がオリンピック予選を突破して、リオデジャネイロに行ってほしいと思っているはずです。だが、現実として、状況はJ1、J2で先発していない選手が多い。そういったこともあって、日本のフットボールの将来が少し不安です。国内ではなく、インターナショナルな選手になってほしいが、そういった選手が見られない。日本のフットボールに関して、そんな分析をしている」

 ◆日本はフットボールにおいて新興国だと断言する。実際そうだ。この現実を、真っすぐ突き付けてくる。目をそらしているわけではないが、どうしても聞こえはよくない。ただ、もしかしたら、この指摘が停滞する日本のサッカー界が次に進むために受け入れ、乗り越えていかなければならない事実なのだろうか。

 「ヨーロッパのフットボールの歴史の延長線上に、いま、我々はいる。我々の世代(60歳代)に、日本のフットボールはプロとして存在していませんでした。ただ(Jリーグ創設から)23年かかってここまできた。その意味では、まだ新興国です。

 日本のフットボールは急激に発展した。だれもが評価しています。ただ、もっと向上するにはどうすべきか。能力はある。我々は、日本を経済大国であるとも評価しています。経済大国であれば、お金も使い、やはりフットボールの強豪国にならないといけない。

 そして、能力ある指導者も増やしてほしい。育成において必要です。育成の3段階をへて、その先にA代表があるのです。テニスでも、錦織圭は育成という段階をへて世界で一流になった。日本のフットボールも同じです。ラグビーもしかりです。

 オーストラリアからエディー監督が来て、(W杯前に)6カ月準備をして、世界一になったことのあるチーム(南アフリカ)に勝った。監督のコメントは、ほとんど私と同じ内容です。就任会見を思い出してください。選手のメンタリティー、そしてフットボールそのもの、つまりすべてを向上させないといけないんです」

 ◆ヨーロッパ至上主義で日本を見下していると受け取る向きもあるだろう。一方で、真摯にハリル節を聞き、立ち止まって考えてみると、真実のようなものも見えてくる。監督ハリルホジッチの評価は、結果によってなされるもの。うるさいことを言うから、厄介な人間だと思うのは簡単だが、ここまでの叫びを聞き、1度考えた上でピッチ上に目を向けて手腕を判断しても遅くはない。16年はそんな年になればいいと思う。

 「まず、フットボールにおいては新興国だという認識から始めるべきです。おそらく、20年後には違う立場で話ができるはずです。日本とヨーロッパの時差も影響している。情報が遅れて入ってくるのは仕方ないが、まったく違うフットボールがヨーロッパでなされているのです。

 Jリーグのチャンピオンシップ決勝第1戦を見に行き、大阪から戻ってテレビでブンデスリーガを見ました。プレミアリーグも。まったく違います。ただ、近い将来、彼らと対戦しなければならないのです。その準備をしておかないと。

 1カ月で準備できるものではない。W杯は、4年の準備期間が必要です。いきなりできるものではない。少しずつ積み上げていくしかないのです。幸い、選手の能力は十分にあります。15年には18歳も、20歳も、22歳も、幅広い世代の代表チームを見に行きました。能力のある選手はいます。ただ、それらを向上させることが必要なのです」

 ◆このインタビューとは別の機会、15年の年末にハリルホジッチ監督はこうも言っていた。「日本のフットボールをしっかり向上させたい。いつか『ヴァイッド(自身の愛称)ありがとう』と言われたら、それで十分だ」と。ひとつ言えることは、本気で仕事に取り組む人間であるということ。16年の仕事ぶりを、じっくり見極めてみたい。(終わり)