リオデジャネイロ五輪出場を逃した女子日本代表なでしこジャパンが8日、4大会ぶりの予選敗退決定から一夜明け、大阪・堺市内で練習を行った。今日9日の最終戦で北朝鮮と対戦。就任9季目の最後となる佐々木則夫監督(57)は、ラスト采配の後に“退任会見”を開く。なでしこ衰退の要因を探る連載「凋落なでしこ」の第2回は、今大会に向けた佐々木監督の準備不足と戦術のブレに迫る。

 どうしよう-。短期決戦で最も重要な初戦で、日本は面食らっていた。予想に反して、オーストラリアが蹴ってこない。「高さと屈強な体を生かし、ロングボールとクロスを放り込んでくる」。監督の佐々木はそう分析し、1、2月に行った計3度の直前合宿で対策に時間を割いてきた。ところが、目の前の敵は前線からの激しいプレスと細かいパスワークで攻めてきた。ボランチの宮間は「映像で見たものと全く別のサッカー」と戸惑い、ボールの奪いどころとして狙われた。

 敵将のスタイチッチが「去年のW杯で日本に敗れてから研究を重ねたんだ」と口角を上げた。一方で、百戦錬磨の佐々木に迷いが生じていた。無謀にもロングボールで対抗し、競り負ける。直前合宿でボールをつなぐ練習に重点を置きながら、いざ大会が始まると「蹴れよ」と声を荒らげた。戦術のブレに、主力の1人は「合宿でやってないのに…」と納得いかなかった。

 昨年のW杯カナダ大会のころから、佐々木は違ったことを試すようになった。ずっとパスで組み立ててきたのに、サイドバックから一気に縦パスを出して前線の選手を走らせたり、逃げ切り専用の5バックを練習しながら、1-0の試合が5回も続いても使わなかったり。「何をしたいのか分からない」「いつ、どんな場面で使うのか説明がないまま、言われた通りに動いただけの日もあった」。選手は理解に苦しんでいた。

 何か新しいことを始めないと-。焦りがあったのだろう。当時8季目。佐々木が「フォー・フォー・トゥー」と呼び、愛着を示してきた4-4-2システムは研究し尽くされていた。9季目の今予選では、その思いが悪い方向に出た。第2戦韓国戦は、ぶっつけ本番で宮間をトップ下に上げる4-2-3-1に変えた。運良く先制したが、5バックへの変更を進めていた最中に失点した。中国戦もロングボールに固執して自滅。「つないだ方がいい」とパスを回し始める選手も出るなど、中途半端な準備が現場の混乱を招いた。

 敗退後、宮間が「4年、5年、それこそ(佐々木の就任から)8年かけて築き上げてきた」と言ったように、11年W杯ドイツ大会の優勝組には、自分たちのサッカーに強い自負がある。ある有望株が足元の技術を評価されて代表に抜てきされても、常連組は、あえて特長を消すように長いパスを出し、走らせ続けたことがあった。その若手は「ボールがもらえない」と肩をすぼめて帰っていった。確立されたスタイルは、佐々木の意図も反映されないほど硬直化していた。【木下淳、鎌田直秀】