FW浅野拓磨(22=シュツットガルト)が、ロシアへの道を切り開いた。前半41分、DF長友が左後方から送った浮き球のクロスにただ1人反応した。オフサイドラインぎりぎりから抜けだし、ジャンプしながら左足でゴール右隅に突き刺した。約1年ぶりの先発に「ヒーローになるんだ、という気持ちでピッチに入った」と心は燃えていた。「W杯出場決定弾」に代名詞のジャガーポーズでほえた。
クロスが届くまで約1・3秒。宙に浮くボールを見ながら、頭は高速回転していた。事前の分析通り、空きやすいファーサイドに切り込んだ。「誰も触らずにボールがくれば決められる。前に大迫さんがいる。止められても、きっと詰めてくれる」。2秒に満たない時間が長く感じられたが、プレーに迷いはなかった。「(脚を)振らずに合わせることを意識した」と優しくボールをとらえた。
7人きょうだいの三男坊は幼い頃からW杯を夢見ていた。大好きな代表戦をテレビで見ながら、自宅の和室できょうだいとボールを蹴った。障子の張り紙を破り、窓ガラスを割り、そのたびに母都姉子(としこ)さんに怒られた。22歳となり、自らの足で夢をつかんだ。トラック運転手をしながらサッカーを続けさせてくれた父智之さんにも恩返しができた。
リオ五輪世代の浅野は「僕らは若い世代ではない。上の人たちをおびやかせるよう頑張る」と言葉に力を込めた。予選突破を決めるゴールは、本田や岡崎らが記録してきたストライカーの証し。若きスピードスターが覚醒した。【岡崎悠利】

