なでしこジャパン(FIFAランク11位)がオーストラリア(同6位)を1-0で破り、2大会連続2度目の優勝を果たした。高倉麻子監督(50)の交代策が当たり、途中出場のFW横山久美(24)が後半39分、準決勝に続く2試合連続の決勝点を挙げた。16年4月からの高倉体制では初のタイトル獲得。16年リオデジャネイロオリンピック出場を逃したチームをしっかりと立て直し、世界一奪還を目指す来年6月のワールドカップ・フランス大会へ弾みをつけた。

 ヨルダンの夜空に歓喜を告げる笛が響くと、ベンチにいた選手らが一斉に高倉監督を囲んで輪を作った。ピッチ上の選手らは抱き合い、笑顔がはじける。試合直後には目に涙を浮かべた指揮官は「苦しい時間帯が続きましたけど、負けずに戦い勝利してくれた選手におめでとうと言いたい」と振り返った。

 勝負どころでの采配が光った。試合ごとに選手を入れ替えながら1次リーグ3試合を戦い、8カ国中5カ国に与えられるW杯出場権を確保。一発勝負の準決勝、決勝では、それまで出場機会の少なかった横山を後半途中から起用。計約40分の出場で3得点と大爆発させ、チームを頂点へと導いた。

 決して順風満帆の2年間ではなかった。16年4月にリオ五輪アジア最終予選で敗退したチームを引き継いだ。「ボールロストを嫌がり、リスクを負わないために早く展開していた部分があった」と既存の戦術にメスを入れ、相手のプレスがある中でもしっかりとパスをつなぐサッカーを目指した。「あんまり形でサッカーをやるのは好きじゃない」と選手に自由も与えた。

 攻守で決まり事の多かった佐々木則夫前監督の戦術に慣れていた選手らは困惑。連係不足から簡単に失点する場面が増え、自身への風当たりも強くなった。それでも信念は曲げなかった。「この立場にいる限り、内容の悪い試合をやればいろんな方にご意見を頂くのは当たり前。チームが育つには時間が必要だった」。

 選手に変化が見え始めたのは3月のアルガルベ杯。欧米の圧力に屈する試合が続き、自主的に守備時の約束ごとを全員で共有した。自由の中に規律が生まれ、今大会5試合2失点という安定した守備につなげた。

 普段、愛用する指輪にラテン語で刻まれている座右の銘は「私は道をみつけるだろう、さもなくばつくるだろう」。まさに高倉流の道筋で、最高の結果をつかみとった。【松尾幸之介】