日本(FIFAランキング50位)が準決勝でイラン(同29位)に3-0で完勝し、2大会ぶり5度目の決勝に駒を進めた。0-0の後半11分にFW大迫勇也(28=ブレーメン)が頭で先制点を奪うと、22分にはPKを決めて2点目。同じく2得点した初戦トルクメニスタン戦以来5試合ぶりの先発で、今大会5戦無失点のイランを粉砕した。2月1日の決勝は、UAE対カタールの勝者と最多5度目の優勝をかけて戦う。

半端ないって。やはり決めたのは大迫だった。スコアレスで迎えた後半11分、MF南野の左クロスに頭を合わせる。アジア最高の呼び声高いGKベイランバンドの手前に飛び込むと、額でとらえたボールは日本サポーターの目の前でネットに突き刺さった。今大会の全5試合で完封してきたイランの鉄壁をぶち破った。

その直前、南野をファウルで倒したと勘違いした相手DFが足を止めた。その隙を逃さない。南野はボールを追ってクロスを放り込み、大迫はDF背後にポジションを取り直していた。「大一番で、アジア杯で1番の試合ができたので自信にもなる」。中東まで応援に駆けつけた、観客席のモデル三輪麻未夫人と長女の前で復活の一撃を決めた。

高校時代は「頭で決めた記憶がなかった」が「鹿島時代はもう練習、練習」の日々で無心に頭を振った。ドイツでは猫背を矯正。背筋のバランスから呼吸法まで見直し、個人トレーナーとは週2回、体幹や横隔膜を鍛えた。風船を膨らませながら、ストローをくわえて呼吸を制限しながら、の腹筋でバランスが安定。空中戦で、ぶれなくなった。

11分後には、イランを絶望に追いやる2点目を奪った。南野が得たPK。後輩の左足シュートが滑り込んだ相手DFの左手に当たった。主審がビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)で確認も、判定は変わらない。大迫は、迷わずボールを手にペナルティースポットへ向かった。森保監督からキッカーに指名されている。ベイランバンドの動きを読み、右足でGKとは逆のゴール右へ沈めた。

2点とも、決めた後は迷わずベンチへ走った。今大会、練習をともにすることが多かったサブ組のところへ。昨年末のリーグ戦で右臀部(でんぶ)を痛め、今大会の初戦で2得点した代償として再発した。以来、歩いても痛みがある状態からリハビリを始め、ピッチに戻ってからはサブ組と練習。一体感も高めてきた。

「(けがで)出場できない時間が続いていたので、チームのために点を取ろうと思っていた」。エースなのに出場できず「ふがいない気持ちが強かったので、今日はプレーで示したかった」と思いを爆発させた。

大迫の得点試合は、これで8勝2分けと不敗神話を更新。対アジアの公式戦39戦無敗だったイランも、半端ない大迫の前に屈するしかなかった。後半ロスタイムにはMF原口が左足で3点目。今大会初の複数得点差での完勝で、6連勝。日本が5度目のアジア頂点に王手をかけた。【木下淳】