9月に開幕するサッカーワールドカップ(W杯)アジア最終予選の日本のアウェーでの試合が、地上波から消えた-。映像配信サービスのDAZN(ダゾーン)は19日、アジア・サッカー連盟(AFC)との間で、2028年までの長期契約に合意したと発表。同日、長く“絶対に負けられない戦いが、そこにはある!”のキャッチフレーズで中継してきたテレビ朝日は、ホーム5試合のみ地上波独占生中継すると発表した。ホームは地上波、テレ朝で視聴できるが、アウェーはDAZNと契約して視聴するしかなくなった。

ついにこの日が来た。開幕が近づいて一部会場が決まってもテレビ放送が「未定」だった、日本のW杯アジア最終予選について、2つの発表があった。まず、Jリーグなどを配信するDAZNがAFCとの長期契約合意を発表した。ついにW杯予選をDAZNが配信する。

この発表の5時間後、長くAFC主催大会を地上波で放映し続けてきたテレビ朝日が「ホーム5試合のみ地上波独占生中継する」と発表。巨額の放映権料に加え、コロナ禍で実施概要が不透明なこともあり、テレ朝含め他局も従来通りの契約は結べなかった。ただ、長くW杯予選を“絶対に負けられない戦いが、そこにはある!”と、お茶の間に届けてきたテレ朝がギリギリの線で、意地を示したような契約発表にも感じられた。

幾多の名勝負を生んできたW杯アジア最終予選を取り巻く状況は激変する。日本代表は、日本サッカーのシンボル。子どもたちはテレビで簡単に見ることのできた憧れの日本代表選手の姿を見て、サポーターもスタジアム以外でも、気軽にテレビ画面を通じてともに戦ってきた。そんな日常、これまでの常識が一変。アウェー戦は地上波から消え、月額税込み1925円のDAZNで視聴する流れとなる。

関係者によれば、主催者ではないため今回の契約にタッチしていない日本サッカー協会(JFA)だが、地上波放送の重要性を強く認識しており、今後のサッカーの普及などに危機感を抱いているという。

◆DAZNと日本代表戦 19年の南米選手権を初めて配信。この時は、NHKと在京キー局が代理店を通じて南米連盟と交渉したが、1次リーグ3試合が日本時間の午前8時開始で、朝の情報番組と重なるため地上波は撤退。BS放送も検討されたが、高額な放送権料に対応できなかった。地上波で中継されないのは10年1月6日のアジア杯予選イエメン戦(サヌア)以来、9年半ぶりの出来事だった。