トルシエ、岡田、西野-。森保一監督(53)は先人たちからの学びをいかした。ワールドカップ(W杯)で過去最高16強に進んだ日本代表監督は3人。「ベスト16にいった3大会の成果と課題は自分の中で考えている」。黒星先行で崖っぷちに立たされた最終予選。過去の監督たちの戦術と采配を支えにしてきた。

初めてベスト16に進出した02年W杯日韓大会のトルシエ監督からは組織力を学んだ。ディフェンダー3人を横一列に並べ、押し上げる「フラット3」という独自戦術を武器にした。そこに「自分の役割をまっとうする日本人の強さ」を見たという。名前のついた独自戦術こそ持たないが「戦い方の絵を合わせること」と常に口にしている。

10年南アフリカ大会の岡田武史氏から得たのは守備力。日本が長く弱点としてきたサイドを起点とした攻撃の対策を立てながら、堅い守りで1次リーグを突破した。崖っぷちから巻き返しの転機となった昨年10月12日のオーストラリア戦(埼玉)。負ければW杯出場が絶望的だった状況で、森保監督は陣形を4-2-3-1から4-1-4-1へ変更した。MF遠藤、田中、守田の能力を見定め、岡田氏がW杯本大会で取り入れていた戦術をここ一番で使って2-1で勝利。「この形でサイドのケアをする。ヒントをもらっている」。ここから4-1-4-1が基本となり6連勝。失点はオーストラリアから奪われた、そのときの1点のみだった。

そして18年ロシア大会の西野朗前監督。森保監督はコーチとしてベンチ入りし、戦いぶりをそばで見た。強豪相手にも勇気を持ってボールを握り、自分たちから仕掛ける。日本の選手を信じた強気の采配に「戦えば渡り合えるところを見せてもらった」。W杯予選が始まってからも、ボールを持てるときはミスを恐れずにつなぐことを重視した。そこに自らのメソッドでもある攻守の切り替えの鋭さを浸透させ、状況を素早く見極めて対応することを選手に求めた。

日本が16強に進んだ大会だけではない。14年ブラジル大会のザッケローニ監督が掲げたプレー強度の高さ、18年ロシアW杯を勝ち取ったハリルホジッチ監督が強調したデュエル(球際の戦い)。「まず個を上げないといけないという、世界基準での提言だった」。球際で負けないこと。森保監督は試合のたびに繰り返し言う。

基本陣形を広島時代から代名詞だった3バックではなく4バックを迷わず採用したのも、岡田氏や西野氏の体験談を聞いたうえで自ら決めた。国際経験は少なくても、世界を知る先人たちが残したメソッドと自身の信条を融合させ、日本代表の歩みが詰まったチームを作ろうとしている。残された時間は約8カ月。「まだまだ課題はある」と話す指揮官が、日本代表を未踏の世界へ連れていく。【岡崎悠利】(終わり)