アジア・サッカー連盟(AFC)は30日までに、2026年ワールドカップ(W杯)アジア2次予選の日程を更新。3月26日に日本代表がアウェーで北朝鮮代表と対戦するW杯2次予選の試合会場が、平壌の金日成競技場に決まった。女子日本代表の2月24日のパリ五輪アジア最終予選の北朝鮮戦も同競技場で開催される。日本代表が平壌で試合するのは2011年11月15日のW杯ブラジル大会アジア3次予選(0●1)以来、13年ぶり。当時の異様な状況を振り返る。
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ザッケローニ監督が率いる日本代表が平壌で北朝鮮と対戦したのは、11年11月15日。タジキスタンとのアウェー戦を終えて北京に移動して調整し、試合前日の14日午後1時半すぎに北京を出発し、空路で平壌入りした。前もって持ち込み禁止を通達されたスマートフォン、パソコンなどの電子機器は北京市内のホテルに置いてきており、選手はほぼ手ぶらという珍しい光景が見られた。
困難に直面したのは、平壌の空港に着いてからだった。選手、日本協会関係者など49人の入国審査が待てど暮らせど進まない。書類の不備などを指摘され、修正を強いられる場面もあった。さらに、ガム、バナナ、袋入りラーメン、はたまたザッケローニ監督が持ち込んだわさびのチューブまで没収されてしまう。電力供給が不安定なのか、通関中に空港が3度停電するトラブルもあった。
10月下旬に下交渉などで日本協会職員が入国した際は通関に30分ほどしかかからなかったが、実際に日本代表の入国時は5時間ほどの時間を強いられ、試合前日練習のため試合会場に空港から直接移動する羽目に。当初、午後5時から開始予定だった前日練習が始まったのは同8時だった。
後日、日本側の関係者からは、同年9月2日の日本でのホームゲームの際、日本側が来日した北朝鮮代表に対して制裁措置に従い徹底した検査を行ったことに対する「対抗措置」を取られたのではないかという声も上がっていたほどだ。
入国時のバタバタだけでは済まされなかった。平壌市内のホテルにチェックインし、部屋に入った選手はその内装に驚かされた。部屋の至る所には複数の鏡が設置されていたのだ。洗面所や化粧台だけでなく、本来ならあるはずのない壁面にも鏡、鏡、鏡。選手間では「不気味だから他の選手と相部屋にできないか」という声も上がったが、それはできず…。さらに各部屋の前には「世話係」のような人物が無言で立っており、行動が全て監視されていた。試合当日の朝には北朝鮮と国交のあるイタリア国籍のザッケローニ監督がホテル近辺に散歩に出かけたが、北朝鮮側から猛烈な注意を受けて渋々ホテルに退散するという場面もあったという。
試合も異様な空気が流れ、開始50分前から「マスゲーム」をほうふつとする人文字応援が展開され、太鼓やメガホンをたたく音や歓声で選手間の声は通らない状況に陥った。試合前の君が代斉唱の音楽もかき消され、選手たちは「経験したことがない圧力」「選手の距離が離れると声が全く聞こえなくなった」と話した。
相手の激しい当たりでペースをつかめず、不慣れで固い人工芝のピッチにも大苦戦。結果的に0●1で敗れ、就任以来17戦目にして初黒星を喫したザッケローニ監督は「(北朝鮮は)大変なプレッシャーがあったのだろう。この一戦にかけてきたという印象が強い。予選敗退が決まっているので警告をもらってもいいという戦い方をしてきた」と振り返った。【元日本代表担当・菅家大輔】

