北海道コンサドーレ札幌は今季最終戦で2位サンフレッチェ広島に2-2で引き分け、アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)出場圏内の3位入りを逃した。前半、MFチャナティップ(25)FWジェイ(36)のゴールで2点先制したが、1点差で折り返し、後半に追いつかれた。初のACL切符は天皇杯の鹿島アントラーズの結果次第となったが、クラブ史上J1最高4位。ミハイロ・ペトロビッチ監督(61)が就任し、超攻撃的サッカーを掲げたシーズンで大躍進した。

手にしかけた夢のACLへ、あと1点が届かなかった。一時2点リードも、後半6分に追いつかれ、勝ち越し点が奪えず、試合は終了。今季最多3万4250人の観客の前で勝利を目指した選手は、力が抜けたようにピッチに崩れ落ちた。ペトロビッチ監督は「我々がACLの権利を取るには足りない結果。勝利すべく素晴らしい後押しをしてくれたサポーターに、結果で応えられなかった」と、申し訳なさそうに話した。

新監督は、クラブJ1最高11位だったチームのマインドから変えようとした。1月の沖縄キャンプ中、チームの食事会でのこと。お酒を楽しみ、ペトロビッチ監督を囲んでの初めての会で親交を深めた夜。ほろ酔いの指揮官は締めのあいさつで、こう言った。「今年、絶対にリーグ戦かカップ戦のタイトルを取るぞ」。酔いの勢いで出た言葉ではなく、目は真剣。都倉が「『マジか』と思った。僕自身、J1でタイトル争いをしたことがなかったから」と振り返るように、まずは残留が現実的な目標だった選手が多かった。だが、広島、浦和レッズを率いた名将は、さらなる高みを見つめさせた。

頂点を目指すにも、チームにとっては不安だらけの滑り出しだった。今ではミニゲーム中に1タッチに制限されてもパスがつながるが、当初はそうはいかなかった。1タッチに制限された途端、サイドにボールが出てスローインかゴールキックでの再開が繰り返された。なかなか展開されない。連係がかみ合わない。イライラも募った。

そんな不穏な空気の中でも、選手の感情のコントロールも巧みだった。ミーティングでの(監督の愛称)ミシャ流人間教育だ。練習中にチームメートへの不満をあらわにしたFWジェイに対して、出身のユーゴスラビアの話を聞かせたことがある。「私には故郷がもうない。どこに行ってもビジターだ。海外で仕事するというのは、その国の人の特性を知った上で、リスペクトしないとリスペクトされないよ」。仲間への思いやりを教え込んだ。この日、スーパーゴールをたたき込んだ36歳の士気を持ち上げるなど、チームの雰囲気づくりにも力を注ぐと、結果も自然とついてきた。

自力でのACLは逃したが、3位鹿島の天皇杯優勝の条件で可能性を残している。札幌にとっては大躍進と言っていい。「コンサドーレとして前進した証し。来年は今季を超えるような結果を求めていく」と力強く言い切った。夢の続きは来季、見せてくれるはずだ。【保坂果那】

◆ACL出場の可能性 リーグ戦4位となった札幌は、天皇杯で準決勝まで勝ち進んでいる鹿島の結果に委ねられることになった。天皇杯優勝クラブにもACL出場権が与えられ、リーグ戦1~3位と重複した場合、リーグ戦4位クラブが出場権を得る。リーグ戦3位の鹿島が5日準決勝、9日決勝を勝ち抜けば、札幌の初のACL出場が実現する。